現在の洋服の売れ行きは天候や気候によって大きく左右されることは広く知られています。
日本には着物という固有の衣服がありましたが、着物の場合は季節を先取りした柄を着ることが「粋」だとされていました。桜の柄の着物は桜の季節に着るのではなく、3月に着るのが「粋」なのです。
昔の洋服の売れ行きには「先物買い」の要素が強かったのですが、それはこの着物文化の名残ではないかと個人的に思っています。
しかし、現在、クソ暑い真夏に防寒着はよほどのブームでなければ買いません。昨年夏には8月にカナダグースのダウンが売れたと言われていますが、それは単なるブームであり、このブームが去ると果たして同じ売れ方をするのかどうか疑問しかありません。
逆に寒い日に半袖は売れません。
30~40年前にはまだ「先物買い」の名残が多分にありましたし、気候に左右されない着こなしもありました。例えば、3月中旬から下旬になれば、服装に気を使っている人は冬のコートは着ずに、スプリングコートなどを重ね着して凌いでいました。
今はどうでしょうか。寒ければ4月でもダウンやウールコートを平気で着ます。そんな痩せ我慢をしている方が奇異でおかしくてダサいと見なされるようになったと感じます。
それほど大きく売れ行きが左右されるにもかかわらず、アパレル業界は天気のデータを本気でそろえようとはしません。あやふやな人間の記憶を頼りにしようとします。
アパレル業界には土台の考え方のおかしな人が多く、天気をあやふやな記憶に頼ろうとしたり、算数が苦手にもかかわらず小数点の出るような計算を暗算でしようとします。どうして電卓を使わないのでしょうか。アホ過ぎて理解不能です。
さて、みなさん、今年の6月は近年まれに見る低気温だったといえます。7月も中旬までは異例の低気温でした。
関西は一昨日くらいから暑くなりましたが、それも長続きするかどうかはわかりません。
ここで質問です。
昨年7月の気温を覚えている人はどれくらいいるでしょうか?
また昨年7月に各地に水害をもたらした大雨が降ったことを覚えている人がどれくらいいるでしょうか?
昨年の7月は、これも異例に梅雨明けが早く7月8日にはもう梅雨明けしてしまいました。そしてそこから7月末まで連日35度~38度という超高気温が続いたのです。思い出しましたか?
そして、その梅雨明け直前の7月6日には大雨が降って各地で水害が起きました。関西でも終日JRの電車の運行がストップしていました。思い出しましたか?
こうして見ると、昨年7月と今年の7月はまるで逆の気温の推移だといえます。
こうしたデータをアパレル業界はどうして正確に蓄積しようとしないのでしょうか?昨年7月の高気温も異例のことなので、昨年7月の気温を基準に夏物を発注すれば、余ることは目に見えています。
そういえば、某Rなんとかというコンサルタントが、一昨年1月・2月の大寒波の記憶だけを頼りにして、防寒アウターを多めに発注し、暖冬だった今年の1月・2月に大幅に余らせたことを「気温の変化なんて誰も予測できないもん」などと嘆いていましたが、一昨年の1月・2月の大寒波が「異例」だと記憶していれば、そんなアホな発注はせずに済んだはずで、同様の思考の人が、今年夏も夏服を余らせているのです。
それこそ、天気や気候のデータは10年分か20年分をAIにインプットさせれば良いのです。AIなら平均気温を正確に割り出すはずで、異例の気候の際にはショートしたり余らせたりするかもしれませんが、確率的には勝ち越すことはできるはずです。
あやふやな記憶に頼ろうとしている限り、これからもアパレル業界は苦戦し続けるでしょうね。