夏といえば怪談が連想されやすいですが、アパレル業界には背筋も凍るような「怪談」がたくさんあります。
ちなみに、怪談はもともと「夏の風物詩」ではありませんでした。中国では「冬の風物詩」だったのです。有名な怪談に「牡丹灯籠」がありますが、これは実は中国のお話を我が国向けにリメイクしたものです。
そしてオリジナルの中国のお話では舞台は冬です。
さらにいえば、夏の風物詩の1つである花火ももともとは夏ではなく、牡丹灯籠のオリジナルのお話では冬に花火を上げています。
閑話休題
先日、こんな業界怪談を聞きました。
現在、手詰まり感の強いアパレル業界はAI(人工知能)に活路を見出そうとしています。活路を見出そうと言えばカッコイイのですが、実際のところは、万事休すによる他力本願にほかなりません。
居酒屋での「とりあえずビール」よろしく、「(どうやったら良いのかわからないから)とりあえずAI」という感じです。
実際のところはまったく効果が出ていないのですが「AIによる需要予測」に過大な期待が寄せられています。
AI業者にはベンチャーも多くあります。当然、資金と実績が欲しいですから、ガツガツと売り込むチャンスを狙っています。
中には詐欺まがいのAI業者も少なからず含まれています。
しかし、アパレル業界人の多くは文系脳が多く、真贋を見極めることができません。またメディアも特に新聞記者は科学分野には極端に弱いですから、真贋を見極められないことがほとんどです。
その結果、新聞での発表を鵜呑みにして、そういうAI業者と多額のカネで契約してしまいます。
先日、ある大手アパレルが、1億円支払った需要予測型AI業者と契約を打ち切りました。さっぱり効果がなかったからです。
途中で気が付いたこの大手アパレル経営者はまだ賢明だといえます。
別の大手アパレルですが、経営陣があまり賢明でないため、契約しているAI業者をどんどん増やして、今では3社になっています。
恐ろしいことに契約料というのは、各社に毎月5000万円ずつだと言われています。これが事実なら3社合計すると年間18億円も支払っていることになります。
これだけでも十分に背筋が凍る怪談なのですが、もっと恐ろしいことがあります。
実は3社とも、自社のAIではそのアパレル企業の業績を上向けることはできないと悟っているそうです。ではどうして続けているのかと言うとそれは
「毎月5000万円くれるから」
だそうです。
要するに、成果が出なくても5000万円ずつ毎月もらえるから惰性でやっているというのです。
そしてそのAI業者らは「アパレルにAIは適していない」と語っており、今もらっているお金を蓄えて、食品などの異分野にAIを普及させる目論見だそうです。
この大手アパレルといつまで契約が続くのかはわかりませんが、大手アパレルは彼らにとっては、単なるお財布扱いでしかないということです。
本当に恐ろしいアパレル業界の怪談だといえます。
こういうことを防ぐには、経営陣がまず自分の頭で考えるという癖をつけるほかありません。皆さんもお気を付けください。