生地の製造工程には必ず「整理加工」という最終工程が必要になります。
各産地には必ず「整理加工業者」が存在していました。販売員の皆さんは整理加工という工程をご存知でしょうか?
恐らく、知らないという人がほとんどではないかと思います。
業界の中でもかなり地味な工程であり業者です。
しかし、整理加工という工程は重要でこれを経ないと、通常我々が手芸店や生地問屋で見かけるような生地にはなりません。
生地の種類にもよりますが、織り上がったばかりの生地は表面が凸凹だったり、シワシワだったり、ザラザラだったりします。
この表面感を整えるのが整理加工で、この工程を経て初めて、我々が通常目にする表面感の生地に仕上がります。
最近はストレッチ素材が全盛ですが、このストレッチ性にも整理加工は重要な役割を果たしています。
ストレッチ素材にはポリウレタン弾性繊維が使用されることが多く、例外としては、ポリウレタンではなくPTTポリエステルが使用される場合があります。
PTTとはポリトリメチレンテレフタレートのことですが、めんどくさい人は覚えなくても大丈夫です。
このPTTポリエステルは通常のポリエステルとは異なり、伸縮性があるため、ストレッチ生地に使用されることがあります。
それはさておき
ポリウレタン弾性繊維は、何も加工されていない状態ではまるでゴムの糸みたいにぐにゃぐにゃしています。これを生地に織り込むのですが、織っただけでは物凄く伸縮性があります。
しかし、通常の洋服になった際には、特殊な用途の服を除いてはそこまで伸縮性が強いのはあまり見かけないのではないでしょうか?
ほんの少しだけしかストレッチ性のない服もあります。
それはどうしてでしょうか?
実は整理加工というこの地味な工程で、ストレッチ性をコントロールしているからなのです。
整理加工でどのくらいのストレッチ性を残すのかをコントロールしているのです。
ですから、伸縮性をかなり残したキックバック性の強い生地にもできますし、ストレッチ性をほとんど殺した微ストレッチ生地にすることも、この整理加工という工程でコントロールできるのです。
もちろん、ポリウレタンだけで生地は作れませんから、一緒に織られている綿、ウール、ポリエステルなどの繊維の特性を考慮しながら、加工によってコントロールしていくのです。
この地味で知名度の低い工程の重要性をお分かりいただけたでしょうか。
しかし、この重要性にもかかわらず、地味で知名度が低いため、国内の整理加工場はどんどん減っています。倒産・廃業が多く見られ、かつては各産地にあった整理加工場ですが、そろそろ産地内には整理加工場がなくなりそうな産地も出てきました。
国内の繊維の製造加工場というと生地工場や染色工場がイメージされやすいですが、実はこういう地味な工程も存在しており、この地味な工程がないと生地は完成しません。
メディアや識者はこういう部分にもクローズアップしないと、製造の全体像が業界の隅々にまで行き渡らないということをもっと考慮すべきでしょう。