原毛と羽毛価格の高騰は商品価格にどう反映されるか?

今年も早い物でもう4か月が過ぎました。

きっとあっという間に年末になって来年の正月を迎えることでしょう。

少し前のことになりますが、今年の正月明けの繊維ニュースに「羊毛の価格高騰」という記事が掲載されました。くどくどしくは述べませんが、オーストラリアやニュージーランドで生産されるウールの原毛の価格が高騰したということです。

ウールに限らず、綿花にせよカシミヤにせよダウン(羽毛)にせよレザーにせよ毛皮にせよ、洋服の材料となる原料の価格は相場で変動します。高騰することもあれば暴落することもありました。

綿花は比較的価格が安定していますがそれでも2011年頃は史上最高価格にまで高騰したことがあります。
アメリカ南北戦争以来の高騰ということでしたが、現在はほぼ元に戻っています。

しかし、植物である綿花以外の動物原料に関しては、高騰するかじわじわと上がるかは別として、値上がりすることはあっても値下がりすることはないという状態がこの10年くらい続いてきました。

ウールも毎年ジワジワと上がっていたのですが、この4年間くらいは急激な値上がりは見せませんでした。
ウールとともに高騰していると、今言われているのがダウン(羽毛)です。

ダウンについては、今秋冬展示会を開催しているアパレルメーカー各社が口をそろえています。
もちろんダウンもこの10年間毎年ジワジワと上がってきたのですが、今年はかなり値上がりしているようです。

そうなるとどういうことになるかというと、ウールやダウンを使った製品が値上がりすることになります。
ウールだとコートやスーツ、冬用のセーター類ということになりますし、ダウンはそのままダウンジャケットということになります。

今、値上がりしていますが、今の価格で作る製品は早くても今年の冬以降、遅ければ来年の秋冬物ということになります。

生地問屋やアパレルメーカー各社はこう指摘します。

今年の秋冬向けの原料はすでに確保しているところが多いから、セーターもコートもダウンジャケット類もさほど値上がりしないだろう。

と。

大幅な値上げが見込まれるのは、来年の秋冬物です。
ウール100%のセーターはかなりの高額品になってしまい、ユニクロと無印良品以外の低価格品ではウール100%セーターやウール混セーターは姿を消してしまうのではないでしょうか。

もっと深刻なのがダウンジャケット類です。
来年の秋冬にはもう「格安ダウンジャケット」は生産できないのではないかと思います。
低価格品は中綿ブルゾン、高価格品がダウンというふうにくっきりと分かれるのではないかと思います。

そして、2万円や3万円程度のダウンジャケットは、中の羽毛の質は著しく低下すると考えれらます。

このことがわかっていれば、今秋冬、そして来年秋冬にウールのセーターやダウンジャケットを売る際の接客トークの在り方が見えてくるのではないでしょうか?

販売員のみなさんやデザイナーの人たちは原料価格の上下動なんてまったく興味もないでしょうが、実はみなさんが販売する商品の価格を大きく左右する要因なのです。
もし、販売員として成果を出したいなら、こういう原材料の価格動向まで気を配っておく必要があります。

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】