都合の良い転職話にはご注意を!?

皆さんこんにちは。アパレルキャリア論の吉田直哉です。

転職という事象が一般的にも受け入れられるようになって久しいですが、以前は転職に対して「裏切り者」といったレッテルが貼られ、話題にすることすらタブー視されるような空気がありました。そうした空気感は終身雇用を前提とした日本独特の雇用制度によるところが大きいと思います。

「転職をすること」が一般的にも珍しくなくなったことにより転職に関する情報や伝聞にも触れる機会が多くなりましたが(それこそこの連載自体もその一つですね)、その一方でSNSなどで目にする実例紹介やそれに対する反応を見ていると、キャリア支援に携わる者として「これは由々しき問題だな…」と感じることも増えてきました。

今回の記事は、こうした周りに溢れる情報を自分に都合よく解釈せずにちゃんと正しい情報を理解して行動していけるための考え方についてまとめていきたいと思います。

転職で年収アップの本当と嘘

「転職によって年収が大幅アップしました!」といった華々しい話、見聞きしたことはありませんか?

知人の転職話や噂で聞いた話、更には知人に限らずネット上にもこうした情報がたくさん流れてくる。はっきりとお伝えしますがこの手の話は転職エピソードのうちのほんの一部の事例であり(感覚値ですが恐らく全体の中でも10%も存在しないエピソード)、更にはネット上にある情報に関しては「実体験ブログに見せかけた人材会社のプロモーション」であることも少なくありません。これは転職に限った話ではありませんが、どうしてもインパクトのある話というのは広まりやすく印象深くもなりやすいもので、このような美味しいイメージだけを植え付けられてしまうケースが多いです。

実際に転職相談にお見えになる方の中でも「転職で年収が上がるもの」と思い込んでいる方が非常に多く見受けられます。しかしながら、転職によって年収が上がるケースはさほど多くなく、基本は現状維持、場合によっては(未経験要素を含むなど)現状よりもダウンしての提示も結構多いものです。

もちろん、年収アップの実例も存在します。場合によってはそれが大幅なアップに繋がることもあります。ではそれはどのようなケースかというと主に下記の3パターンです。

・給与水準の高い異業界への転職

・現在の給与が同業同職種の相場よりも著しく低かった

・採用企業がなんとしても採用したい!と思えるほどの高評価をつけた(ヘッドハンティングに多い)

どうでしょうか?もし貴方が転職を考えるている場合はこのいずれかのパターンに当てはまりそうでしょうか?

「結婚を考えているから」「学校に通うことにしたから」「高い家賃の家に引越しをしたから」などなど様々な理由で年収アップ希望の相談を受けますが、採用企業側からすれば何の関係もない話です。これまでの連載でもお伝えをしてきましたが、しっかりとしたマーケット感覚(相場感)を持つこと。その上で自己評価を正しくし続ける努力をしましょう。

なお、年収に関してアドバイスをするのであれば、転職時に提示される年収よりも入社後の昇給可能性を重視した方が良いでしょう。仮に入社時に提示された年収が良い条件だったとしてもその後の昇給がほとんんど無い、なんていう企業もあります。短期的な収入ではなく、長期的に見た生涯収入としてどうかという視点を持つことをお勧めします。

転職活動で陥りがちな青い鳥症候群

給料アップ、残業無し、大手企業、リモートワーク可、キャリアパスが開けている、家から通いやすい、副業可…などなど、転職先に求める希望条件として上げられる内容はたくさんあります。そしてそれらを希望することはごく自然なことだと思います。

ただし、それらが全て叶えられる会社は存在しません

不動産に置き換えて想像してみてください。貴方は今転居先を探しているとします。

希望の条件として…

・渋谷駅から徒歩5分以内

・新築

・2LDK

・10階以上

・3口コンロ

この部屋を6万円で借りれるとは思えないですよね?頑張って10万円まで出したとしてもまず難しいでしょう。これがいわゆる相場感覚。

キャリアも同様です。まずは前述の通り自己評価を正しくすること。そしてその上で実現できそうな希望且つ優先度の高い希望条件は何かを絞って考えること。希望の全てを叶える企業を求めるのは「青い鳥」を探すようなものです。「そのタイミング」での求人との出会いを大切にし、その中でベターな選択をするというある種の割り切りも必要です。

そして、転職は自分自身が客観評価に晒されることとも言えます。転職活動を頑張ったから採用されるのではなく、これまでの経験が評価されるから採用されるというシンプルなものです。どんなに企業研究をしても、どんなに志望意欲が高くても、どんなに一生懸命面接でプレゼンをしても、評価の主軸は「面接の出来」ではなく「これまでの経験」です。飛び道具のように転職活動によってこれまでの全てがリセットできるわけではありません。常日頃からキャリアの積み上げを意識しつつ、正しい方向に適切な努力をし続けること。そしていざ転職を考えたときの自分のための最大の準備になることを忘れないでください。

それではまた次回!

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吉田直哉
About 吉田直哉 31 Articles
株式会社ALL IS NEW 代表取締役社長 大学卒業後バーニーズジャパンに入社。販売員としてキャリアをスタート。20代でリクルートへ転職しキャリア支援のキャリアをスタート。その後ファッション業界専門のヘッドハンターとして業界におけるキャリアコンサルティングに従事しつつ、Vice President、執行役員としてマネジメントを経験。 。累計転職相談者は1万人を超える。現在は株式会社ALL IS NEWの代表取締役としてファッション業界のキャリア支援、採用支援をしつつ、「人が繋がるを」コンセプトにしたスナック「BANQUET CIRCUS」の経営や、 文化服装学院の非常勤講師としても活動中。 ファッション業界関係者限定の招待制交流イベント「FASHION SNACK」もプロデュース。また出身地である福島県いわき市にて地方創生事業も展開。