ダンボールニットの回。

肌寒いけど、まだ着込むほどでもないって時、さらっと一枚着の上にアウター的な合わせ方したい派の僕ですが、そんな一枚着で程よい肉感やシルエットを作ってくれるのがダンボールニットという素材で作られた服だったりします。

 

ファッション業界にいらっしゃる皆様にとって、ダンボールニットという言葉は聴き慣れていらっしゃるかと思いますし、その商品も何度か触ったことはあると思います。なのでタイトル画像のような言葉とイメージが合致しないことはないと思いますが、改めてダンボールニットについて考えてみたいと思います。

 

ダンボールニットってなんでダンボールニットかというと、ま、そのままなんですが、コレです。 

これの、この構造に似ている生地だからです。

 

なかなか裁断端が断ち切りになった商品を店頭で見ることはないと思われるので、ダンボールニットの生地をちゃんと横から見るとこんな感じになってます。

ダンボール紙のソレっぽいと思いませんか。

 

丸編みの場合、これ組織的には接結(セッケツ)の仲間なんですが、表面の生地と、裏面の生地を中の糸で柱状態でつないでいるから表裏の生地の間に隙間が生まれて厚みが出るってのがダンボールニットの特徴です。以下、理解に便利なので、柱状態につないでいる中糸のことをこの場では暫定的に柱糸と呼ぶことにします。実際にはそんな言い方はしませんが。
この記事を書くまえにチラッと世間でダンボールニットってどういう説明のされ方をしているのかネットサーフィンしてみたら、ダンボールニットの由来と意味はほとんどこの通りだったんですが、スポーツ用途から派生したから毛玉になりにくいイージーケアとか書いてある記事を散見したのですが、それは、生地によるので、ダンボールニットという編み組織自体には毛玉防止能力はないのでその辺をメリットとして考えるのはいささか乱暴です。ご注意ください。

おそらく本当にガチのスポーツ系に使われているものなら表も裏もポリエステルフィラメントで作られているから毛玉になりにくいというイメージで書いてると思いますが、ポリエステルフィラメントで作られている生地も微細な引っ掛かりが蓄積したら毛玉にはなります。

それに昨今のダンボールニットは綿やレーヨンなど多彩な短繊維を使っていたりするので、中の柱役の糸より柔らかい素材を表面に持ってきている生地に関しては表に柱糸が突き出してその突き出した柱糸が引っ掛かりを起こして糸引けになったりと、案外デリケートな素材です。

なのでダンボールニットだから丈夫でイージーケアっていうのは一括りにできないんですよね。

 

また、大体は軽くてシルエットもパコっと出やすいダンボールニットですが、中には商品名にダンボールニットと書いてあっても、厚みもハリコシもないやつがあったりします。またはその特徴である、厚いのに軽いはずのものが、普通に重かったりとか。。。
それは、さっきの写真のような組織構造にはなっていても、中の柱糸の柱の高さが低かったり、柱糸に使っている糸が柔らかいものだったり、短繊維だったり、フィラメントでもハイカウント(硬くて柱になりやすいのはモノフィラメントと言って太い一本でできている長繊維を使っているのですが、ハイカウントというのはフィラメント自体が細くて、たくさん集合しているものをいいます)だったりと、編み組織的にはダンボールニットなんだけど、糸の使い方によって厚みも重さも色々あるということなんですね。

 

一昔前にデザイナーズ系はこぞってダンボールニット使ってたイメージあります。いったん下火になって、最近また言われ出している感じがしています。お店で見かけた時には、原料構成によっては案外デリケートな素材ってことを覚えておくと良いかもしれません。かわいさと引き換えに何か犠牲になっている可能性はなくはないので。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

山本晴邦
About 山本晴邦 18 Articles
新潟県、佐渡市の達者という小さな集落にて生まれ育つ。 縫製業を営む母に影響を受け、高校卒業後に洋裁専門学校へ進学。 専門学校在学中に和歌山の丸編み生地工場の東京営業所でアルバイトに付きそのまま就職。 工場作業から営業まで経験し13年間同社にお世話になり独立。ulcloworksを立ち上げる。 原料から糸の作り方、生地の編み方や染め方を常に探求して日々研究に勤めている。 業界の将来に繁栄をもたらすにはどうしたら良いのかを常に考えている。