AFFECTUSの新井茂晃です。
先日、TwitterのTLを眺めていたら以下の記事が紹介されていました。
【連載】これからの服作りを探る、デザイナー訪問記 vol.4 AUBETT
ファッションメディア「Numero(ヌメロ)」の連載で、デザイナー自らがアイテムの魅力を語っていく内容で、とても面白い記事でした。今回の記事で取り上げられていたブランドが2020年秋冬シーズンにデビューし、今年2021年春夏シーズンがまだ2シーズン目となるブランド「オーベット(Aubett )」です。
オーベットのデザイナー杉原淳史氏と僕は文化服装学院時代の同級生で、学生時代から彼はまさに有言実行の人間であり、彼はやろうと言葉にしたことをいくつも実現させていました。彼は「スムースデイ(Smoothday)」という高品質カットソーを用いたブランドを展開していましたが、昨年オーベットを立ち上げて、新たなるスタートを切っています。
今回はそのオーベットの魅力について語っていきたいと思います。
緊張と浮遊感を体験するフォルム
オーベットのデザインは、デザイナーの杉原君(今回はこう呼びたいと思います)が、自ら立体裁断でパターンを作っています。立体裁断とは人体を模したボディにシーチングという試作用の安価なコットン生地を当てて、鋏で裁断しながらピンでシーチングを留めていくことで、服の形を作っていく技術です。
下の写真は、以前僕が立体裁断で作っていたコートの写真です。こんなふうにシーチングをボディに直接当てながら、服の形を模索して作っていきます。
このコートは、実際にはこのような形になりました。
こんなふうに立体裁断で服が形になっていきます。
杉原君はこの立体裁断の技術が卓越しています。実際に僕もその技術を目の当たりにしていますが、その発想と技術にとても驚きました。
杉原君の立体裁断の技術が余すことなく使われた服がオーベットになります。
彼が立体裁断で作るフォルムは、身体に付かず離れずの浮遊感を感じさせ、同時に緊張感滲ませる形を作り出しています。その感覚がコートやブルゾンのアウターはもちろん、シャツやカットソー、ボトムにまで注ぎ込まれています。
服を着ることの心地よさ、これが体験できることもオーベットの特徴と言えるでしょう。
素材に注ぎ込まれる情熱
オーベットのもう一つの特徴がオリジナル素材です。シャネルツイードを男性にも着られる素材にという発想から、機屋で作られたオリジナルツイードは編み地素材かと思うほどの軽量感を備えていて、通常のツイードとは異なる体験をもたらしてくれます。
こんなふうにオリジナル素材の開発もしながら、その素材を杉原君の卓越した立体裁断の技術によって作られた浮遊感と緊張感のあるフォルムに乗せていくことで、オーベットの服は完成していきます。
また僕が個人的に感じるオーベットの魅力は、そのイメージです。オーベットの服や提案するスタイル、発表されるビジュアルを見ていると僕はミッドセンチュリーがイメージされてきました。
ミッドセンチュリーとは1950年代を中心に1940~1960年代にデザインされた家具やインテリア、建築などを指す言葉で、そのデザインは時間を経てもシックに響く美しさを備えています。奇抜さや派手さはないのにもかかわらず、目を惹きつけるデザイン。それが僕がミッドセンチュリーに抱くイメージです。インテリアデザインで言えば、次の写真のようなデザインがミッドセンチュリーになります。
*TOKOSIE「セレクトショップ元バイヤーさんご自宅 米軍ハウスから学ぶ現代日本の暮らしのルーツ」より
オーベットはそんなミッドセンチュリーに似合う服の空気を僕は感じます。時間を経てもシックに美しさを響かせる服。そんなイメージを浮かばせます。
卓越した立体裁断によって作られた、オリジナル素材を用いたフォルムにミッドセンチュリーの空気が重なったブランド。それが僕の解釈するオーベットです。
デビュー2シーズン目にして28店舗との卸が決まり、デビューシーズンの2020年秋冬は卸先ショップで軒並み完売となっていました。今後のオーベットがとても楽しみです。
ブランドサイト
https://www.aubett.com/
〈了〉