先日、無印良品のウェブサイトで商品を見ていたらこんな一文がありました
「空気の流れで紡いだ糸を云々」。
何も知らない人が読むと、けっこうカッコイイと感じるのではないでしょうか。
しかし、紡績の知識が多少ある人が読むと、たちどころに空紡糸のことを指しているということがわかります。空紡糸は、繊維の長さを引きそろえずに、空流で糸を紡ぐ技法で、大量生産に適した廉価な紡績です。
アメリカのカジュアルブランドがかつて好んで使っていた糸です。
廉価で大量生産というところがいかにもアメリカらしいといえます。
空紡糸で織られたり、編まれたりした生地は表面が乾燥したような肌触りになることが多いです。また少し軽量になります。バブル期のアメリカのジーンズはこの空紡糸で織られたデニム生地が使われていました。独特のカサカサ感と軽量感がありましたが、いかにも「安物臭かった」というのもまた事実です。
今ではあまりこの空紡糸デニム生地は作られていません。
空紡糸と反対にコストが高いのがリング糸です。
これは綿花の繊維をほぐし、繊維の長さを引きそろえて紡績します。
繊維の長さをそろえるという一手間が加わっているため、コスト高になります。
しっとりとした表面感で、重量感もあります。
現在の高額なジーンズに使われているのはほとんどがこのリング糸で織られたデニム生地です。
この一文を読んだときに「無印良品は上手いなあ」と感じました。嫌いですけど(笑)。なぜなら、廉価な空紡糸をこれほど「カッコ良く」アピールしているのです。
多少大げさな表現だとは思いますが、嘘はついていません。値段のことはまったく触れていませんが。(笑)
無印良品が好調だという報道がありますが、なるほど売れるのも納得できます。
しかし、一方でこうした「上手い」表現が横行することで物事の本質が分かりにくくなっているのも事実です。
一概にコスト面ばかり強調しても仕方がないですが、なぜコスト差ができるのかが誤魔化されやすくなってしまいます。
ほかにも、よくジーンズブランドで「職人がこだわって作った」みたいな表現が雑誌や記事でよく見かけますが、その職人とはどの工程の職人を指しているのでしょうか?
縫製ならその多くは流れ作業です。もちろん縫い方の上手い下手はありますが、1本のジーンズを一人の職人が縫い上げて完成させるという工場はほとんどありません。
洗い加工にしてもそうです。
実際に紙やすりみたいなもので擦る場合もありますが、今ではレーザー光線やオゾン発生器による洗い技術が主流になっています。それらの装置を設定するには専門の技術が必要になりますが、職人のこだわりというのとはちょっと違うような気がします。
無印良品のようにアピールするのは理想的ですが、上手い表現をしすぎると、逆に実態がわからなくなってしまう危険性もあります。そういうことが積み重なって「わかりにくい」「実態が見えない」ようになったのが現在の繊維・ファッション業界ではないかと思ってしまいます。
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