最後に決めるのは、私たちではなく”顧客”

こんにちは、なかみぞです。

だーーーーいすきなブランドやショップたちが徐々に秋めいてきました。

初夏から晩夏、そして秋への(店頭の)グラデーションは個人的も一番好きな季節です。

さて、皆様買い物されてますか?

ものを売るということをするのなら、賢い顧客でなくてはならない。という言葉もあります。

当然のことながら、“ものを作る”ことと”ものを売る”ことは全く違います。

ものを作る事のプロフェッショナルが、ものを売る事のプロフェッショナルを兼ねる事はあっても、どちらかを得る事で自動的に兼ね備えるスキルではありません。

買い手になるとわかるのに、作り手モードの時は頭からすっぽり抜けてしまうポイントをば。

 

顧客の意思決定を意のままに操る事なんてできない

こうやって書くと当然のように思えるかもしれないんですが、無意識のうちに自分のコントロールできるものの幅を勘違いしていたりしませんか。

逆に言うと「こういう売れ方をしなくちゃいけない、でもできないんじゃないか」「こんな風に思われたりするんじゃないか」そんな当たり前のことをめちゃくちゃ心配したりしませんか。

ものを作ることに特化したプロフェッショナルは、ご自身のつくるものに対する理想があり、それを突き詰めて技術を磨いてゆく事もあると思います。

それは本当に素晴らしい事で、私も毎回「こんな風にしたらきっと喜んでくれる!」「使う人たちは無意識だけどここをこうするだけで使いやすくなる!」とか、プロダクトに対してはかなり細かな仕掛けをするタイプです。

でも、それを全面否定されることがあるのが市場です。

選ぶ権利は顧客にある。

これはよくてあれはダメなんて言っている、”あれはダメ”にも、顧客が価値を見出せばそれは価値です。

貨幣を払うべき価値になるかどうかを決めるのは、顧客です。

 

理想通りに受け取ってくれないお客様の存在を怖がっていては、 はっきり言ってものは売れません。

自分・自社のできうること、干渉できる範囲、そこから先の顧客の意思決定、それを取り違えないこと。

 

定めるべきは顧客に向かう、こちらの姿勢

顧客の姿勢をこちらが自由自在に操作し決定しようというのが難しい事は、明かかと思います。

簡潔に行って仕舞えば、操作できるのは自分の意思、関わる自社のアウトプットに施せるもののみです。

そういった意味では、ブランディングでものの見え方をコントロールし、働きかけていくことはできます。

 

馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない

というイギリスのことわざがあります。

わたしたちが作用できる部分、できない部分を言い得た絶妙な表現だなと思うのです。

プロダクトに対して徹底して、力の限りやるべきは「馬を水辺に連れて行く行為」です。

そして限りなく「水を飲んでもらえるように」施策をすること。

ただし、飲むかどうか本当の最終決定権は顧客にある。ここは揺るがない部分です。

「水を飲んでもらえないこと」を延々怖がっているのでは生産性は生まれません。

できることは、それよりも前にある。

結果に繋がらないのなら、連れて行く水辺を変えたり、冷やしてみたり、考えるべきはそっちです。

 

時間を”過去”で止めないこと

“ものを作る”という行為は、作り手とものの対峙でもあります。

汗水垂らして磨いてきた技術、知識を使って作り上げる商品にこそ価値がある。

これは”ものを作る事”に対するコミットであり、商品そのものの価値をあげる際には必ず必要な事だと思います。

ただし、その”商品に対する正当な評価“を決めるのは、あなたではありません。

言い換えると、ほしい評価を得るために頑張る事はできても、その評価を出すかどうかは買い手の問題です。

というのが市場です。

いまの若い人はわかってない!とか

自分はこうやってきたのに!とか

そういうのが先立ってくると危険です。

自分ではなく周りが悪いを展開するなら、厳しいものがある。

毎回「じゃあ”あなた”は”いま”どうすんねん・・・」という言葉を心の中でつぶやいてしまう・・・。

鍛錬して積み上げた技術、知識は大切にしなければいけません。

他にはない唯一無二のものならなおさら。

売りたいのなら、あなたがいままでやってきたことの見返りがほしいからするのではなく、これからできること、提供できる何かを考える事でしかもうものは売れないのですよ。

時間が過去で止まっているものは、工芸品に見えます。

現代のプロダクトではない。

ファッションはなおさら、70Sなどの流行がきたとて、同じ焼き直しであることはほとんどない。

かならずその時代の新しい価値が付帯しています。そして消費者は常に、”いま”を生きているわけで1970年を生きているわけではないのですよ。

あなたがいくら、その時代がもっともファッションがよかったと思っても、それは”いま”じゃない。

市場と自社、他人と自分、その距離感の取り方を忘れないようにしたいものです。

 

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中溝 雪未
About 中溝 雪未 69 Articles
1990年生まれ。コレクションブランドの企画室でインターンからデザイナーアシスタントとして勤務。その後アパレルブランドで布帛・ニットをはじめとするデザイナーの経験を積み独立。現在フリーランスとして企画・デザイン・パターンを担当。 プロダクトアウトなものづくりからマーケットインまで、偏らないバランス感覚を武器に、コンセプトメイクからお客様に届くまでをディレクションするプランナーとして業界を問わず活動中。