先日、現役販売員の方々何人かとお会いしました。
若手でもないし、超ベテランでもない中堅という年ごろでしょうか。
共通するのが、エリアマネージャーやブランド長くらいの上司の方々が、現場の状況をわからずに自分の思った通りの施策しかしないということでした。
ぶっちゃけ、京都高島屋店と阪急メンズ館では例えば、同じブランドでも客層も違うし、混雑する時間帯も異なります。
阪急メンズ館なら平日でも夕方からは仕事帰りのサラリーマンでそれなりににぎわいます。
しかし、京都高島屋は京都で一番店とはいえ、平日夕方にサラリーマンはほとんど立ち寄りません。
そもそも河原町の百貨店に仕事帰りのサラリーマンは立ち寄らず、休日昼間に立ち寄ることが多いそうです。
そうなると、京都高島屋店と阪急メンズ館店で同じ施策をしても無駄です。
まるっきり賑わう時間帯が異なるのですから。
平日夕方に標準を合わせてディスプレイを変えるという施策は阪急メンズ館店では通用しても京都高島屋店では通用しないということです。
本来、本当にできるエリアマネージャーやブランド長なら、それぞれの商業施設の特性を把握して、それに合わせた施策を打ち出しますが、アパレル業界のエリアマネージャーやブランド長はそこまで考えられる人はあまりいません。
彼らは、かつてのエース販売員で、目の前の自分の店で売ることには長けていても、それぞれの店の特性をリサーチしてその相違点を抽出して、それぞれに合った施策を考えることは甚だ不得手なのです。
その結果、「ワシが販売員の時はそれで売れた。売れないのはお前らの気合と根性が足りないからだ」というような極度の精神論に走りがちになります。
しかし、精神力だけでB29は撃墜できないのです。
ピストルの弾を気合ではじき飛ばすことはドラゴンボールの世界でないと不可能なのです。
いくら気合を込めても、ピストルの弾はあなたの皮膚を簡単に貫通しますし、竹槍でB29を撃墜できれば、我が大日本帝国は大東亜戦争に勝利できたことでしょう。
平日の夕方にサラリーマンが立ち寄らない館でいくら気合を込めてもそれは無駄なのです。
このトップセラーのメンバー、読者には現在のトップセラーが多数います。
販売実績が良ければ、いずれ皆さんはエリアマネージャーやブランド長に昇進することでしょう。
昇進した際に、科学的思考を身につけていないと、二言目には「気合」とか「根性」「売る気」としか説明できない、今の無能エリアマネージャーや無能ブランド長の後任になるだけでしょう。
きっと20年後のあなたは「ワシが店長のときはこれで売れた。売れないのはお前らの気合が足りないからだ」なんて寝言をほざいていることでしょう。
プロ野球では、世界記録を持つような名選手が名監督・名コーチになることはあまり多くありません。
王貞治さんと野村克也さん、落合博満さんくらいでしょうか。
300勝投手のクサダマシイのオッサンはいまだに指導者に復活できませんし、400勝投手の人だって監督時代の成績は惨憺たる有様です。
逆に亡くなった仰木彬監督は、現役時代はそれほど突出した選手ではありませんでしたし、日本ハムの栗山監督は現役時代はほとんど活躍していません。
どうしてそうなるかというと、突出した記録を作れる選手は努力もさることながら、もともとが素質がずば抜けているのです。
ですから、練習すればそれに伴って成果が出たのです。
黙々と走りこんだら300勝勝てたのです。
しかし、普通の選手は彼らと同じ努力をしても300勝はできません。
そういうときに、普通の選手の気持ちがわからなければ、「ワシは毎日走りこんだら300勝できたんや。お前らも毎日走ったら300勝できるようになる」なんて指導しかできないのです。
ですから、名選手の多くが名指導者にはなれないのです。
今のエリアマネージャーやブランド長はそういう300勝投手や400勝投手と同じです。
毎日死ぬ気で売ったら、毎月何百万円も売れてしまったのです。
でも同じノウハウは万人には通用しません。そこがわからないから頓珍漢な指導しかできないのです。
トップセラーのみなさまは、いずれ、幹部に出世したり経営者に上り詰める人もいるでしょう。
くれぐれも「自分独自のノウハウは再現性がない」ということをお忘れなきように。
再現性のある指導法を確立できた人だけが、部下に慕われる上司になれるのです。
今の上司の悪い部分は他山の石としてください。