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先日、阪急百貨店の某部長と会食をしたのですが、その席上で某部長が「最近、三越伊勢丹HDの危機を伝える記事がやたらと多いですが、どうしたのですかね?」と疑問を呈しておられました。
三越伊勢丹HDの今年4月~10月までの売上高は対前年比4・7%減と落ち込んでいて、2018年度を達成目標として掲げていた連結営業利益500億円を2年後倒しすることも決定しており、減収減益基調で推移しています。
2016年3月期が増収に終わっているため、4月以降の落ち込みが目に付くことは当然といえます。
某部長の疑問にお答えするなら「常と異なる状態となった場合、マスコミはニュース価値を見出す」ということを挙げたいと思います。「去年と同じでした」とか「いつもと同じです」ということに人はニュース価値を見出しません。「いつもと異なる状態になったときにニュース価値は発生しますから、増収から一転して減収減益に陥った三越伊勢丹HDの苦戦は、メディアにとっては大きなニュース価値があるのです。そのため、いささか過剰ともいえる三越伊勢丹HD苦戦の報道が続いているといえます。
それはさておき。
ここ最近の三越伊勢丹HDに対して個人的な意見を述べたいと思います。
2012年に大西洋社長が就任してから積極的に店舗改装を行いました。
2013年の伊勢丹新宿本店、2015年10月の三越銀座店、つぎは三越日本橋店の改装オープンが控えています。
古来より「天地人」といわれます。戦に勝つには「天の時、地の利、人の和」が重要だということです。2009年の大河ドラマ「天地人」のタイトルはここから取られています。
人の和についてはわかりません。そこまで三越伊勢丹HDの内部事情は詳しくありません。当然、反体制派も少なからず内包しているでしょう。
地の利は移転していないのでこれまでと変わっていません。
個人的に、今の三越伊勢丹HDは「天の時」に恵まれていないように映ります。
その象徴が三越銀座店の改装オープンです。昨年10月に改装オープンしましたが、その目玉は外国人観光客を目当てにした大規模な免税コーナーでした。
外国人観光客、中でも中国人による高額ブランド品まとめ買いの「爆買い」現象は2014年、2015年と百貨店の苦戦を一時期緩和しました。しかし、2016年初頭から一転して「爆買い」は終了しました。
2015年10月に免税コーナーを拡大して改装オープンした三越銀座店はタイミングが悪いことこの上ありません。
また「爆買い」終了は伊勢丹新宿本店の苦戦の要因の一つでもあります。
しかし、これらも突き詰めると三越伊勢丹HD首脳陣の見通しが甘かったということになります。その意味では「因果応報」なのかもしれません。
中国人の「爆買い」なんて長期間に渡って続くものではありませんし、それが続くと見て、免税コーナーを拡大したり、中国人向けの商品を増やすことはいささか短慮だったと言わねばなりません。中国人客という不安定要素を確実視しすぎたのではないでしょうか。
また、伊勢丹新宿本店にも「爆買い」終了以外にも陰りが見られます。ブランドごとの壁を作らないという伊勢丹式陳列法を忌避するブランドがいくつか現れています。
たとえば、今年6月に松屋銀座店と阪急うめだ本店にコスメショップをオープンした「クリスチャンルブタン」ですが、伊勢丹新宿本店も誘致を働き掛けていました。しかし、ブランド側は伊勢丹ではなく、松屋と阪急を選んだのです。その理由について伊勢丹首脳「ブランドを壁で区切らない並び方が嫌がられた」と説明しています。日経新聞にはフランスの老舗バッグブランド「モワナ」が今春に伊勢丹新宿本店を避け、西武池袋本店に常設店を開設したことを伝えています。
これも三越伊勢丹HDの陳列法が招いた結果ですから「因果応報」の一例といえるでしょう。
こうしたこれまでの「強み」が「弱み」に転じていることも「天の時」に恵まれていないとぼくには映ります。
今後しばらく続くであろう「不遇の時代」を耐え忍ぶことができるかどうか、これが今後の三越伊勢丹HDの浮沈と生き残りを大きく左右することになるでしょう。
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