一次流通をジャマしない、サステナブルな二次流通のススメ:課題編

サステナビリティ担当の Jasmineです。

先月初寄稿させて頂いた記事、読んでいただいたみなさまありがとうございました。
まだの方はぜひこちらから。

「エシカル」「サステナビリティ」は怖くない

前回予告した通り、今日は「二次流通」について書いていきたいと思います。

二次流通とは?

「二次流通」という言葉、聞いたことはあるけど何だっけ?という方も多いのでは。

ざっくり説明すると、一般的な商品の流通(企画/製造→卸→小売)のことを「一次流通」、それ以外(一度販売したものの再販や在庫の下取りなど)を「二次流通」と呼びます。

みなさんご存じのメルカリは、消費者間(CtoC)の二次流通、一般的な古着屋さんはリテールでの二次流通、最近話題のオフプライスストアやRenameなどのタグ付け替え再販なども二次流通です。

二次流通での販売には「古物商」という警察からの許可が必要となります。そこでは13品目が定義されており、「美術品類・衣類時計宝飾品・自動車・自動二輪車・自転車類・写真機類・事務機器類・機械工具類・道具類皮革ゴム製品・書籍・金券類」となっています。つまり、13品目中4品目がファッション関連なのです。Kicksカテゴリがサザビーズで出てくる最近の傾向から、美術品類もファッション関連と言えるかもしれません。

また、二次流通の市場規模は2017年で約2兆円、経産省の試算では潜在的に5.2兆円のポテンシャルのある市場、その1/3程度がファッション関連品と言われています。

つまり、販売されたものの大部分が二次流通として市場を作る可能性があり、もはや一次流通から見ても無視できない規模の市場なのです。

二次流通は嫌われ者?

そんなポテンシャルのある二次流通市場なので、ぜひ販売においても効率的な商品計画で取り込んでいきたいところです。が!現在は「業界全体から無視され、嫌われている」という状況です。

例えば、「読者モデルの着せこみでVintageカテゴリはNG」「雑誌への広告出稿NG」「セレクトショップでの商談も門前払い」ということは少なくありません。また、急速に二次流通でのスタートアップ起業が発展したアメリカでは「ラグジュアリーブランドから訴訟通知が届いたら認知としてスタートライン」などとも言われています。

理由はひとつ、一次流通がリソースを費やした「企画製造」という血と汗と涙の結晶を、消費者や在庫品の買取というシンプルなプロセスで代替し、より安い値段でほぼ同一の商品を提供することができるからです。例えば、あなたが企画して作ったスウェットを15000円で販売していたところ、フリマアプリで5000円で売られていたら、心証的にもムカつきますよね。そして、そのスウェットが5000円で売れたところであなたには1円も入って来ませんし、ましてや新品で買ってくれるお客さんをフリマに奪われる可能性すらあります。作る側の身になってみると二次流通が嫌われるのには納得の理由があります。

二次流通を無視していると何が起こるか?

では、商品を生み出す側として、二次流通を敵として頑として受け入れない状態を作っていくことが正解でしょうか?ここにはいくつかの問題があります。

・環境負荷の問題

適正量でモノの流通が行われていた時代では二次流通の規模も小さく、一次流通で足りていない物品の補填の役割しかありませんでした。しかし、現在の日本での流通では、衣服だけで年間に40億着が作られ、そのうち13億着が新品の破棄在庫、つまり袋からも出されず誰にも袖を通されることもなく、捨てられて行きます。多くは焼却されるか、途上国へリサイクルの名目で送られ、海に埋め立てられます。また、二次流通が市場として受け入れられることがこの先なければ、基本的には一度販売されたものの全てはいずれゴミになります。

・破棄在庫が格安販売へ流れていく問題

環境負荷だけでなく、商品の廃棄にかかるコストも数億円単位でかかります。少しでもコストにしないよう、海外での販売に流したところで、エンドユーザーに格安で販売されてしまってはブランドイメージの棄損は避けられません。先日放送されたガイアの夜明けでも、行き着く先は「格安販売」であることに違和感を感じた方も多いのではないでしょうか。環境負荷の低減とコスト削減を目先で両立したように思えても、これがサステナブル(30年先の未来に負荷をかけない方法)なのかは疑問が残ります。

・再販価格がブランドへ及ぼす影響

また、現状であまり話題に上ることはないのですが、再販価格(リセールバリュー)について日本では消費者が実権を持っています。つまり、メルカリ等のフリマアプリやZOZO USEDでAIが実勢価格に基づいて値付けした価格が二次流通での販売価格の基準となりつつあります。この価格決定にブランドの意思が入ることは、一部のラグジュアリーブランドを除いてはまずありません。「フリマでみんなが売っている価格」が「そのブランドを手に入れられる価格」になってしまうのです。二次流通の市場拡大はもう止めることはできません。そんな中、二次流通を無視し続けると、ブランド価値は一体どうなってしまうのでしょう…?

悲しいことに、このあたりの問題は日本ではあまり議論されることがありません。

一方で、アメリカの二次流通スタートアップ、Thred Upが昨年出したレポートは美しい二次流通のガイドラインそのものです。これはファッション業界にかかわるすべての方に見てもらいたい資料です。(英語ですがグラフやブランド名が多いので結構読めると思います!)→ ThredUp 2019 Resal Report

あぶり出された課題への対応

さて、今回の「課題編」で、二次流通を無視していると地球環境のサステナビリティだけでなく、ビジネスとして続けていけるかどうかも怪しいくらいの大問題がそこここで起き始めていることをお伝えできたかと思います。ただし、良いニュースもあるんです。それは、課題がわかっているならそれを解決すれば未来は良い方へ向かう、ということです。

次回は「一次流通をジャマしない、サステナブルな二次流通のススメ:解決編」としてここまでの課題の解決策を一挙に提示したいと思います。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

桂茉利子
About 桂茉利子 7 Articles
海外留学を経て、ITコンサルティング会社に就職。2017年にファッションと「ヒト」と「仕事」との関係を変えるスタートアップMODALAVA株式会社を設立。リユースをメインとしたプラットフォームの構築を目指し活動中。