こんにちは、タニグチレイです。
ここ数年皮革製品を取り巻く環境は変わってきています。
ラグジュアリーブランドを中心とする毛皮やエキゾチックレザーの使用廃止宣言は記憶に新しいと思います。
動物保護という倫理的な面を省みて決断し賛同したブランドが多かったですよね。
そしてエコファーという呼び名も出てきました。
ちなみに一番最初に皮革について書いた記事(だったかな?)で個人的にエコファーという呼び名に違和感があると書いたことがあります。
その理由は「エコファー」というネーミングにすることでこちら(人口ファー)が正解(是)としているように感じているからです。
人工のものは生産時に環境への負荷はないのか?生分解性のものは使用されているのか?
廃棄ではなく循環型経済を考えると天然のものの方が当てはまるのではないか?
ただし天然でも飼育や生産過程が不明瞭であったり倫理感を伴わないものであるとするならば変革は必要ではないか?
この辺りは簡単な問題ではなくどちらが正解というよりこの先もより良い答えを出すために追求していく項目でしょう。
あくまで世の風潮としてあたかも新しい呼び名でトレンドが一時的にできてそれで良しと思う人が多いのではないかと違和感を感じていたのです。
だからと言って根本の結論を出せるわけではないので見誤らず考え続けることしかできませんが。
そして毛皮だけではなくエキゾチックレザーも同様に使用の是非があります。
(これは養殖している種が当てはまりそうですが)
こちらも毛皮同様果たしてどういう選択をするのが一番良いのかこの先もまだ変わっていきそうですね。
ただ少し内容が変わりますがエキゾチックレザーの商品を扱っていると必ずといっていいほど言われることがあります。
「これ(エキゾチックレザーの種類は色々あります)って(売っていて)いいんですか?」
これっていいんですか?の質問の後には大体「ワシントン条約」という名称を言われ会話が続きます。
その中にはワシントン条約で保護されているから販売してはダメと思われている方が少なからずおられる。
生活の中で特別身近な事柄ではないですからそうなのもうなづけます。
保護されている動物の革なのにそれを敢えて使用していることに賛同できない。
こういう意見で会話が続く場合もあるのでそれは一意見として納得です。
そこで今回はエキゾチックレザーの是非ではなくまずは保護されている動物の皮革製品の流通からワシントン条約について知っていきましょう。
ワシントン条約は野生の絶滅危惧種の動植物を保護して適正に国際取引するための条約
ワシントン条約とは絶滅危惧種である野生動植物の国際取引に関する条約です。
政府間の国際協定でありその目的は野生動植物の一定の種が過度に国際取引に利用されることが無いようにこれらの種を保護することを目的とした条約。
つまりワシントン条約によって保護されている全ての動植物が商取引をしてはいけませんという条約ではないのです。
ただし学術研究を目的とする以外に商取引は禁止されている動植物もあるのでそこは後ほど書きます。
国際取引というのは商取引だけではなく学術研究による輸出入も含まれるんですね。
国際取引では生きている動植物から剥製、食品、エキゾチックレザー製品、観光土産品、衣料品などそれらに由来する様々な野生動植物の製品があり多岐にわたります。
ですから何もエキゾチックレザー製品、つまり皮革産業だけが該当する条約でもないということです。
生息地の喪失など他の要因とともに個体数を激減させ絶滅に近いものもありますしそこまではなくとも今後の取引の継続を考えると保護する必要がある種もいる。
野生動植物の国際取引では国家間で協力し規制して特定の種の乱獲を防ぐための国際協力が必要というわけです。
そもそもは1972年ストックホルムで絶滅の恐れのある野生動植物の保護を図るためこれらの輸出入等に関する条約を結ぶ会議の開催が提案されました。
翌年1973年アメリカのワシントンで世界81カ国の代表が集まり野生動植物の特定の種の国際取引に関する条約採択のための会議が開催され3月3日絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約が締結された。
その後締結日の3月3日は国連総会が定めた世界野生生物の日と定められたり加盟国が増え2019年11月現在183カ国が締約国になっているそうです。
正式名称はConvention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora 。
頭文字を取りCITES(サイテス)と呼ばれますが開催地の名前を取ったワシントン条約の方が呼び慣れているかと思います。
保護の基準は3つに分類されていて種によって規制内容が違う
実際にワシントン条約によって国際取引を規制されている動植物は相当数あります。
商取引だけではなく学術研究を目的としたものもあると書きましたが種と目的によって3つに分類されています。
その分類は付属書と呼ばれそれぞれⅠ、Ⅱ、Ⅲと分けられる以下のものです。
付属書Ⅰ
絶滅の恐れのある種で取引による影響を受けているまたは受ける恐れのあるもの
・学術研究を目的とした取引は可能(商業目的の取引は原則禁止)
・輸出国、輸入国双方の許可証が必要
・約1,000種の動植物
付属書Ⅱ
現在は必ずしも絶滅の恐れはないが取引を規制しなければ絶滅の恐れがあるもの
・商業目的の取引が可能
・輸出国の発行する輸出許可証が必要
・約34,000種の動植物
付属書Ⅲ
締約国が自国内の保護のために他の締約国の協力を必要とするもの
・商業目的の取引が可能
・輸出国の発行する輸出許可証または原産地証明書が必要
・約200種の動植物
このように目的や条件によって別れておりそれぞれに動植物の種類もかなりあります。
興味のある方は経済産業省のワシントン条約のページをご覧になってください。
知らない動植物も多くあれもこれもと知ることができます。
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/index.html
↑経済産業省のHPより
いわゆるエキゾチックレザーと呼ばれ流通している革は付属書Ⅱに含まれるものが多いはずです。
ですから国際取引上正規の手続きをして販売できるものです。
ここではその是非を問題にするものではありません。
ここまで書いてきたように野生の絶滅危惧種の動植物が対象となっています。
または該当種の養殖の場合は輸出国や地域の管理局の定めに基づいたものになります。
例えばエキゾチックレザーの代表的なものといえばワニ革を思い浮かべる方は多いでしょう。
ワニ目としては付属書Ⅱに所属しているのでどんな種も一見大丈夫に思えます。
しかし高級なスモールクロコと呼ばれるイリエワニは限定された国以外は付属書Ⅰに所属しています。
ですから野生のものであった場合商業目的の取引は制限されます。
そして製品革として流通しているクロコダイルの多くが養殖のものです。
その場合はワシントン条約に則り輸出国の管理局の基準があり取引には繁殖を証明する書類が必要になります。
ここでも天然だとか養殖だとかで是非を判断するつもりはありません。
まずはワシントン条約とはどんなものなのかを知ること。
こうやって知ってみると保護をした上で流通しているものは無駄なく活用したものだとも言える。
ただ規制されている動物の革を使用することへの賛否があることは理解できる。
野生動植物の保護を続け養殖や飼育の実態や生産過程を明瞭にすることが必要とも言える。
倫理や循環型経済、持続可能な環境保全を踏まえてどう選別するのが良いか考えるきっかけになりますね。