こんにちは、タニグチレイです。
国内では緊急事態宣言が解除され商業施設も営業を再開しているところが増えましたね。
昨日を含めここ数日は前年を超える売り上げや買い上げ客数のところもありこの状況の中でも喜ばしいことです。
本当にお買い上げいただいているお客様には感謝ですね。
しかしまだまだこれからも今までとは違う日常が続きますので気をつけながら過ごしていきましょう。
さて、先日WWD JAPANの記事でこういったものがありましたのでご覧になられた方も多いと思います。
素材である革は生産状況や環境などによって変動します。
(ここでは加工や製造は含みません)
革の種類によっても様々です。
このトプセラのブログでも以前に書いたことありますが2014年4月には米国産ヘビーステアは過去最高値となりそこから徐々に価格は下がっていってました。
(2019年12月の日経新聞の記事を参照)
今回はシャネルの件を掘り下げるわけではありませんがバッグや革小物の値上げとありましたので素材としての革の価格にまつわるDSについて書いてみたいと思います。
DS(デシ)は面積あたりに付けられる単価の単位
まず素材として流通する革は面積で取引される際の単位があります。
それがDS(デシ)と呼ばれるものです。
DSとはSquare Decimeterのことでdeciは「10分の1」という意味。
そしてdecimeterなので「1/10m=10cm」となりますね。
さらにsquareとは「2乗」つまり10cm×10cm=100㎠。
この10センチ四方が1DSというわけです。
例えばDS/¥100であれば100㎠分の単価が¥100というわけですね。
ちなみに流通する革の単位は丸革や半裁と呼ばれるものがありますがこれは別の機会で書きます。
簡単に言うと一頭丸々のものを丸革、背割りといって背中心に沿って半分にしているものを半裁といいます。
例えば成牛の標準的な半裁は200〜300DSくらい。
仮にDS/¥100とすれば半裁で単純計算¥20,000〜¥30,000ということになるわけです。
では製品で考えたらどうなるでしょう?
一例としてほとんどの人が今まで使ったことがあって同じ形をイメージできる革製品としてランドセルを想像してみましょう。
(クラリーノだったから本革じゃないというのはナシです笑)
ランドセルひとつで大体60DSと言われています。
仮にDS/¥100とすればランドセルひとつで¥6,000。
ま、ランドセルに使用されるような革はDS/¥100くらいの素材ではないのでここではあくまで想像していただく例えです。
おそらくDS/¥250〜¥300クラスの牛革ではないかなと思いますしコードバンとなると使用枚数が変わりますのでこれも省きます。
とこのようにDSあたりの単価を製品に必要な面積や半裁の面積を掛け合わせることによって知ることができます。
ただしあくまで純粋に材料となる素材の理論上の値段であり実際の材料費とは多少違ってきます。
理由は素材を過不足なく使用できるのかどうか?
例えばパーツ取りした時にバラ傷、トラ、色ムラなど合わせは大丈夫か?
線維の流れ的にどれだけ無駄なく取れるか?
こだわるほどに強度や美しさを保てるものになっているか?
など、例に挙げたランドセルであった場合やんちゃな子供が6年間毎日のように使うカバンです。
扱い方や手入れなど知りもしない時期にガシガシ使っているであろうカバンです。
修理することなく使えてしまうようなカバンを作り上げようと思えば素材にもかなり注意されているはずです。
(今回は作りだとか加工、技術は含みません)
そうなってくると歩留まりが悪くなっても素材そのものから拘らないわけにはいかない。
ランドセルひとつあたり表情の合わせやパーツの相性をベストにするために何枚、何10枚の中から選定して取るなんてことが想像できます。
この辺りはラグジュアリーブランドでも当てはまることではないでしょうか。
さらにはAランク、Bランク、Cランクとランク分けされていますのでAランクのもののみを使用すれば当然高くなります。
追求すれば追求するほどの理由はあるわけですね。
ただ作りたい製品に必要な革の面積を「デシなんぼ」で当てはめたら概算できることは色々助かることも多いでしょうね。
今回はシャネルではなくランドセルを例にしてきましたので最後にひとつ余談。
そもそもランドセルの始まりは幕末に西洋式の軍隊制度が導入された時に採用された布製のカバンが原型と言われています。
その後明治時代に開校した学習院の通学用に採用されたのがランドセルだったそうです。
(まだここでは今のような箱型の形状ではなかった)
当時は経済格差が大きく裕福な家庭では荷物を持つのは使用人。
ですが学習院では「学校ではみな平等」という理念をかかげ学用品は自分の手で持つようにとされ使用されたのが背負えて利便性の良いランドセルでした。
そして現在のような箱型になったのは大正天皇の入学祝いに当時の首相伊藤博文が特注して献上した明治20年。
これが「学習院型」と呼ばれるもので今にも受け継がれています。
ランドセルは日本の文化であり最近では海外でも人気になっていました。
「もの」だけではない価値や特別感、伝統や革新はラグジュアリーブランドの哲学に通じるものがあるように感じますね。