時々、「高い服は長持ちする」という接客を見かけることがありますが、一概に「高い服=丈夫」とは言えないので、こういう認識を消費者に定着させることは、衣料品業界がかえって自分の首を絞めることになってしまうでしょう。
服が高い理由はさまざまあります。
1、生産数量が少ない
2、手の込んだ縫製がなされていて、縫製工賃が高い
3、使用している生地が高い
4、副資材(ボタン、芯地、ファスナーなど)が高い
などの理由が考えられます。
3の使用している生地が高額なためそれを使った製品が高くなるということはよくあります。で、高額な生地というのはどういう生地かというと、非常に作るのが難しい生地であることが珍しくありません。
どうして作るのが難しいかというと、それにもいろいろと理由はあるのですが、その中の一つに「極細の糸を使っているから」という理由があります。
極細の糸を使った生地は当然、薄くなりますし、脆くなります。耐久性はありません。
ポリエステルやナイロンなどの合成繊維ならこの限りではありませんが、綿・ウール・麻・絹などの天然繊維の場合、極細の糸は高額である反面、極めて耐久性がありません。
例えば、メンズのスーツはそれが如実に反映されています。
合繊のスーツもありますが、高額なスーツはウール100%だったりウール主体の複合素材だったりします。使われているウールは極細で生地はしなやかで軽く薄くなります。
スーパー100とかスーパー150とかいう生地もありますが、平たく言えば、これらは極細のウールで織られた生地で、数字が大きくなればなるほど使われているウールは細くなります。ただし細くなりすぎると脆くなりすぎるので、現在のところ上限はスーパー150だとされています。それ以上細くすると脆くなりすぎて着用できなくなります。
この手の高級ウール地を使ったスーツは二日連続で着用すると、伸びたり袖口が擦り切れたりします。非常に脆く、1日着用すれば最低でも次の日は着用せずに休ませなくてはなりません。
こんなに脆くて不便なのに何十万円もします。
お分かりのように、「高い=丈夫」ということを強調しすぎると、この手の高級スーツはますます売りにくくなります。
反対に安価なスーツの方が耐久性は高い場合が多いのです。
使用している生地はポリエステルなどの合繊主体だったり、ウールの混率が低かったりします。ウールが使われているにしても太いウールで生地が織られています。
ポリエステルは耐久性が高いですから、ポリエステル主体のスーツは必然的に耐久性が高くなります。1週間ぶっ通しで着用してもほとんど傷まないでしょう。
また、ワーキングユニフォームは非常に安価でありながら、非常に耐久性が高くなっています。
ですから「高い=丈夫」「高い=長持ちする」とは一概にはいえませんし、それを広めすぎるとかえって高額衣料品は売りにくくなってしまいます。
家電やパソコンなどは価格差が性能差に比例する場合が多いですが、衣料品はそうでないことも珍しくありません。ですから、家電やパソコンのような売り方をすることはいずれ自社のブランドを苦しめることになります。
くれぐれもお気を付けください。
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