残糸と残布

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前回こんな記事をアップしました。

「ラグジュアリーブランドの残糸」に何の価値が?

 

で、最初にこの元ネタを読んだときに「残糸」にピンと来ませんでした。

残糸というのは残った糸のことです。よほどの超高級糸や超機能糸以外は、はっきり言えば、糸の段階ではラグジュアリー向けだろうが普通のアパレルブランド向けだろうがさして変わりません。

多くの場合、糸ではなく、その糸を使って織ったり編んだりした生地で品質が変わります。

何の商材でもそうですが、組み立てずに原料のままで置いておくのがもっともリスクを避けやすい方法です。

機械類なら、製品を抱えるよりも部品のまま抱える方がリスクが低減されます。当たり前ですが、製品に組み立ててしまうと最早、その物を売らないことには現金化できません。

しかし部品のままで抱えておくなら、その部品で他の機械製品を組み立てることができますから、在庫リスクが低減します。

 

洋服もこれと同じです。

洋服で抱えるよりは生地で抱える方がリスクが少ないのです。そして生地で抱えるよりも糸で抱える方がリスクはさらに減ります。

 

ですので、サステイナブルだ、エコだ、と喧しく言われる前から、衣料品業界はこのやり方でリスクを低減させてきました。

ですから「残糸を使いました」なんてことはわざわざ言う必要もなく、残った糸で他の生地を製造して違うアパレルブランドに供給するというやり方は極めて普通のことです。すでに何十年も前から使われているリスク低減方法です。

 

一方、少し前から工場が自らを泊付けするために言い出したのが「ラグジュアリーの残布を使いました」というやり方です。

これは読んで字のごとく、残った布を使うということです。

糸の段階だとどんなブランドでもさして変わらないことが多いですが、生地の段階になると話は別で「さすがは○○ブランド」というような物が出てきます。

残布の場合、消費者にもわかりやすいのでそれなりに受け入れられることもあります。

 

しかし、これももう販促手法としては陳腐化してしまっている感があり、ラグジュアリーの残布を使ったという洋服は業界にもあふれかえっていて、新鮮味は皆無になっています。

 

製造や加工に詳しくないファッショニスタあたりは「残糸」に何か面白味を感じるのかもしれませんが、実際のところは残布よりもブランド価値が感じられない上に、残布製品もすでに陳腐化してしまっているため、ファッショニスタ受けして終わりになる可能性が高いのではないかと考えます。

ファッション業界の欠点の一つに、製造加工段階とファッション段階があまりに乖離しすぎているという点がありますが、残糸による販促というのはその代表例だと思います。

 

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南 充浩
About 南 充浩 161 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】

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