「販売に誇りを」JASPAがプロフェッショナルな販売員のための資格制度を新たに設けた理由
一般社団法人日本プロフェッショナル販売員協会(以下、JASPA)が、高い専門性を持つ販売員に向けた新資格制度を立ち上げた。9月から応募を開始し、来年2月に第1回の試験実施を控えるが、今回なぜ販売員の資格制度を新たに設けたのか?販売職が抱える課題と取り組みについて事務局長の清水洋延氏に聞いた。
2016年に設立された販売員協会。当時からその活動内容にやや懐疑的ではあったが、下記の3つがメインのようだ。
①販売を目指す人への啓蒙活動
②トレーニング
③資格制度
資格制度は今秋、導入予定との事。個人的には資格制度が問題を解決するとは微塵も思わないが、企業との連携次第で、資格取得により給与アップや昇格が見込めるのであれば、現場の方々のモチベーションアップにつがなる可能性はあるかもしれない。しかし、そんな事より先に解決しないといけない課題がいくつかあるのではないだろうか。
○販売を目指したい人間が今のままで増えるのか?
販売職の啓蒙活動が具体的に何を指すのかは不明だが、説明会を開催したところで販売を目指す人間が増えるなら、現在企業が実施しているマイナビなどの合同セミナーで十分事足るはずだ。企業の本音は「販売員以外欲しくない」のだから、そんな啓蒙は過去からずっとやっている。それでも慢性的に人手不足なのは問題が他にあるからだ。
わかりやすいところだと、「労働環境」「給与水準」「キャリアアップ」が原因だろう。教育現場にいると、学生のご両親からもよく聞かれるポイントだ。長時間労働、休暇の少なさ、給与水準が低いのに店頭に立つ為の服を購入しなければならない、そして店長以上のキャリアが見えにくい。といったところだろうか。このあたりも徐々に改善傾向にあるが、それでもまだまだ販売員のイメージは悪い。ここを具体的にどう改善するかが協会のやるべき事ではないのだろうか。
○問題は労働環境と教育の改善
給与に関しては企業のさじ加減で上げる事も可能であり、一部の企業では10数年前では考えられない初任給を提示している事例もある。社内公募制を導入する事によってキャリアアップの道も少なからず見えてきた。ただ、労働環境に関しては配属される商業施設によって大きく異なってくるので、デベロッパーとの連携が必要不可欠になる。
そして教育機関の役割も問題だ。現在、全国でファッション教育機関に通っている学生の数は15000人程度。しかし、その募集人員の多くは販売員を育てるコースに割り振られていない。アパレル求人の9割が販売員なのだから、単純計算で13500人は販売員になる訳だ。しかし、教育期間で販売員教育に力を入れている学校などごくわずか。学生の間にスキルを身につけれず、販売に関してネガティブなまま入社しても離職するケースが増えるだけだろう。そして教育に関しては入社してからも満足に受けれる企業が少なく、今もこうしてスキルアップを目指して日々、Topsellerに人が訪れている。
僕がTopsellerという活動を四元氏と始めてからわかった事がある。それは向上心が高く、学びたいという思いが強い人材は想像以上に多いという事だ。それを「労働環境」と「教育」が阻んでいるように思えてならない。どれだけやりがいを唱えたところで「やりがい搾取」が実態では誰も販売を目指す事は無いのだ。
協会の活動がハリボテだろうと想定内なので個人的に驚きはないが、これ以上、学びたい意欲の強い方々に対してがっかりさせるような事はしないで欲しいと切に願う。AIが導入され、EC化率が上昇し、セルフ販売方式のショップが増えようと、必要な人員の数が減っていくのはタイムラグがある。「将来は人間が働かなくていい世界になる」なんていつ来るかもわからない未来の事を考える必要などない。現場は今日も人を欲しているのだから。