ユナイテッドアローズが2期連続の増収増益、ECは20%超の成長
上記は、ユナイテッドアローズ(以下、UA)の決算が発表された際の記事なのですが、昨今この手の記事にてよく見かけられる「ECの成長率」。これを見るとまるで企業が大きく成長したように見えてしまうのですが、如実に感じるECというチャネルに対する重要性の高まり方。弊社もECを生業としているので、ここを否定するつもりは無いのですが、改めて注意しておかないといけないのが全体のチャネル戦略についてです。
○決算書からわかる各社の「チャネル戦略」
UAの決算書から各チャネルの動向を抜き出してみました。まずは2019年3月期のものがこちら。
(UA決算説明会資料から抜粋)
EC売上のみで263億円。20%の成長率と非常に高い数字ですね。企業全体としても前年度と比較すると業績が伸びているように見えます。ではこれを3年前の2016年3月期の数字と比較してみます。
ECの売上は162億円。三年で100億円近く伸ばしている事になりますね。グループ全体の年商では180億円、粗利は100億円ほど伸びています。営業利益はほぼ横ばいなのですが。(要因は複合的なので今回ここの議論は省きます。)で、問題のチャネルの動向ですが、UAだけで見ると20店舗ほど減ってるんです。(コーエンが伸びているので全体としては横ばいのように見えますが。)
UAも地味に全体の店舗数減ってるんよね。
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— 深地雅也 (@fukaji38) May 9, 2019
実はこのお話、UAだけの事ではなく、アパレルの決算書読んでみるとちらほら見かける事例なのです。代表的なのはユニクロですが、パルグループもそうですし、TSIホールディングスに至ってはECが伸びている代わりに百貨店という販路が大幅に減っています。百貨店は「消化仕入れ」という、ブランドの売上に対するパーセンテージで家賃が決まる方式なので、ECに送客される事を酷く嫌うからです。
○場所の制約を受けないECを拡大する事の意味
各社、実店舗を減らしながらもECを活用して全体の売上を伸ばしています。これはチャネル戦略として成功していると言えるでしょう。ではこのツケはどこに回っているのか?
インターネットはその特性上、強者ほど取り分が多くなる傾向にあります。つまり、ブランド力が強いほど売上が最大化されていくという事です。今までは出店場所によって競合の強い・弱いがあり、ロケーション次第ではブランド力が劣っていても売上を確保できる要素もありました。しかし、全体のEC化率が伸びれば伸びるほど、購買の決定要因は認知度・ロイヤリティといった「ブランド力」に収斂していく。強いブランドは今後もECはどんどん伸ばせる可能性がありますし、弱いブランドは淘汰されていく。
これらを鑑みると、実店舗をむやみに増やしているブランドは「頭打ち」について考えなければなりませんし、「EC強化」を打ち出している企業は自社の「ブランド力」について再検討する必要があるでしょう。結局はECの成長率の話だけしていても何の意味もなく、ブランド全体としてどう利益を上げていくかを考えなければならないのです。EC全盛の時代、カテゴリーキラーが増えている理由はまさにここにあるでしょうし、力の弱いブランドほどECは「希望」では無い事を今一度理解する必要があるのではないでしょうか。