大手アパレルの決算書を読むのがちょっとした趣味なのですが、その中で最近特に注意して見ている箇所があります。
好調とされるOLD NAVYだけど上期39店舗、昨年は74店舗増えてて、上期の売上増減率が0.9%。他の地域はともかく、北米は頭打ちのような気もするんだけど。 pic.twitter.com/Ei3JVUah9m
— 深地雅也 (@fukaji38) September 13, 2019
それは、上記のようなチャネル・流通戦略についてですね。ブランドそれぞれ、全く方針が違うのだから面白いです。OLD NAVYは今後、出店攻勢を強化するような報道ですが、
"実店舗も31の市場で新規開店したが、前年と比べて2店減り、上半期の時点で7420店を運営している。 "
インディテックスもファストリもチャネルのコントロールが絶妙。
RT @wwd_jp 「ザラ」の親会社、19年上期も増収増益 店舗数は2店減 https://t.co/Suhi6rVYsn
— 深地雅也 (@fukaji38) September 12, 2019
ZARA擁するインディテックスは完全にここ数年は出店を抑制しています。もちろん、全く出店しない訳ではなく、不採算店を閉鎖したり、店舗を拡大したりと、スクラップ&ビルドを繰り返し売上アップを実現させています。そして、何よりECの比率を上げる事によって利益率を高めていくという方針でしょうか。
○ECの意味を考える
まだまだ勘違いしている人が多いのですが、ECは需要を作り出すものではありませんので、始めたからといって売上アップはそうそう望めません。役割としては機会損失を防ぐ事、場所の制約を受けないから今まで買えなかった人たちでも容易に購買が可能になる事にあります。情報がリーチしていなければ売れないのですから、有名なブランドほど有利な戦いになります。
こんな状況ですから、ブランドの情報がリーチしている地域やコミュニティ内で店舗を出すメリットって少なくて、国内でも大手アパレルは出店を抑制しているところが多いです。ECの方が理論上は販管費が少なくて済む訳ですから、利益率は高くなります。店舗には情報をリーチさせる力もあるので、出店した事の無い地域であるならECにも波及効果がありますが。
○自社の環境によって戦略は変わる
EC比率が高いから良いとか、そういった事を言うつもりは全く無いのですが、ブランドのフェーズによってこの「流通戦略」は大きく変わってきます。初期フェーズでは情報を流通させて、認知拡大とロイヤリティ向上を目指す優先度が高く、それをECでやるのか、直営店を出店するのか、卸を拡大するのか…。と、ブランドによって方針は全く変わってくるでしょうけど、販路は確立しなければなりません。それぞれメリット・デメリットがあるのですから、自社のブランドとどれが一番相性が良いのか、また自社の持つリソースによってもここの戦略は変わってきます。
決算書を見ていますと、この流通戦略が上手い企業と下手な企業はすぐわかってしまいます。特に日本国内は市場規模が横ばいで、今後は縮小すると見られています。そんな中、既に多店舗展開しているブランドがむやみに店舗を増やして売上を伸ばそうとしても難しいでしょう。逆に、全くブランドの情報がリーチしていない地域でECで戦おうとしても誰も買ってくれません。単純な原理ですが、これからブランドを始める人たちはここを忘れずに戦略立案してみても良いのではないでしょうか。