生地ができる工程を販売員のみなさんはご存知でしょうか?
生地を作るためにはまず糸を作らねばなりません。原材料を糸にする工程を「紡績」と呼びます。
ときどきテレビコマーシャルを流している日清紡はもともとは紡績をする会社です。
社名に「紡」や「ボウ」が付いている会社はもともと紡績だったということです。
日清紡、東洋紡、クラボウ、シキボウ、ダイワボウ、カネボウなどです。
綿、麻、ウールなどの天然繊維を糸にする工程を「紡績」と呼びます。
ポリエステルやナイロンなどの合成繊維は「合繊メーカー」が製造します。
東レ、帝人、旭化成、クラレ、三菱ケミカルなどという会社です。
で、紡績した糸を使って生地を織ります。
紡績しただけの糸では面白味がない場合、糸同士を撚り合わせます。この糸と糸を撚り合わせる工程を「撚糸(ねんし)」と言います。
ポリウレタン混のストレッチ生地を作るためのストレッチ糸は撚糸された物が多くあります。
ポリウレタンと綿やポリエステルを撚り合わせています。
で、生地を織ります。
織っただけでは生地は完成しません。
最後に「整理加工」という工程を経て完成します。
整理加工という工程を聞いたことがありますか?
非常に地味な工程で、恐らく知名度も低いでしょう。
しかし重要な工程です。
例えばストレッチ生地ですが、織られただけの段階だと、ストレッチ性が恐ろしく高いのです。
一度ポリウレタンのストレッチ糸を見てください。
ゴムのように伸び縮みします。ハイパーストレッチ生地ならそのまま生かすという手もありますが、世の中はハイパーストレッチばかりではありません。
通常のストレッチ性の生地も用途があれば少しだけ伸び縮みする微ストレッチ性の生地も用途があります。
このストレッチ性をコントロールするのが「整理加工」という工程なのです。
高い熱を加えるとストレッチ機能は弱まります。超高温ならストレッチ性をすべて無くすこともできます。
で、求められるストレッチ性に応じて温度を変えるのです。
ストレッチ性を半減させたり、微ストレッチにしたり、そういう調整はこの「整理加工」とう工程でなされるのです。
また生地の表面を整えて滑らかにしたり、生地を圧縮して密度を高めたり、工場によっては表面に起毛を施したり、と様々な整理加工を行います。
この工程がなければ、普段、我々が目にするような生地は存在できません。
それほどに重要な工程なのですが、地味で知名度が低いために、近年は各産地の整理加工場がどんどんと廃業・倒産しています。また同業他社に事業譲渡する整理加工場も珍しくありません。
生地製造工場ばかりをクローズアップしてもそれだけでは国内生産を守ることはできません。整理加工場がなければ、売り物になるような生地は製造できないのです。
ここがなくなれば、国内の生地製造は立ち行かなくなります。
それほどに重要な工程なのです。