こんにちは、タニグチレイです。
皮革といえば、イタリアやドイツ、フランスなどを思い浮かべる方は多いと思います。
イタリアならバケッタ製法、ドイツはクロム鞣し、フランスは色彩豊かな発色など国特有の個性が思い浮かびます。
他にもイギリスは堅牢、南アフリカはエキゾチックなどざっくりとですが連想できます。
もちろん、各国いろいろと他にも特徴はありますので、あくまで上記は一番に思い浮かぶイメージです。
では、日本はどうでしょうか?
輸入原皮に頼らず、国内供給で賄っている豚革はひとつこれに当てはまります。
(伝統や歴史で言うと、鹿革のふすべ革が該当しそうですね)
江戸時代には大阪を中心に皮革の流通や売買があったとされています。
この辺りも踏まえ、今回は日本国内の皮革産地について書いてみたいと思います。
日本の三大皮革産地は兵庫、東京、和歌山
まず、兵庫です。
中でも、姫路を含む播磨一帯に多くのタンナーが集まっています。
「姫路のタンナーの革を使用しています」と言うと、安心される方もおられます。
他にもコードバン好きの方にもファンはおられますね。
靴や鞄などの皮革製品用の製革だけでなく、家具や工業用の製革もされています。
成牛革の生産の多くを占めるほどで、これはもともと牛の飼育が西日本で多かったことも関係しています。
そして姫路特有の白なめし革と呼ばれる乳白色の美しい革が有名です。
江戸時代には姫路藩の特産品となり、財源を支えたと言われています。
製革工程は姫路市を流れる市川の水で皮を洗い、塩と少量の菜種油で揉み、天日に晒して乾燥させるもの。
水の硬度やバクテリアが影響すると言われ、市川では伝統として受け継がれてきました。
また、白く鞣した革を黒く染めて、漆でシボを出した黒桟革と呼ばれる革もあります。
先の白なめし革を白靼と呼ぶのに対し、黒靼とも呼ばれています。
白なめし革を松葉と藁で燻煙して、乾燥後上質な漆で仕上げたものです。
昔からの集積地だけに地区全体で革に特化した水処理場があるため、高度な技術で排水処理され川に戻されているようです。
もともと環境には配慮されてきていたことがわかりますね。
次に、東京です。
中でも隅田川、荒川周辺に豚革を扱うタンナーが多く集まっています。
先ほど少し出てきた豚革です。
豚の飼育自体は特に中国などを中心に、アメリカやブラジルなど海外に多い。
しかし、世界的には皮も食用として流通することが多く、日本では副産物の革として流通していたため国内供給で賄っていたわけですね。
鞣しや染色、加工など専門的な職人や工房が集まって、小さく分業していおりエキゾチックレザーの加工工場などもあるようです。
ちなみに豚皮は牛皮よりもコラーゲン線維が細く緻密に絡まっているため、摩耗に強く丈夫という特徴があります。
銀面は細かな凹凸があり、3本ずつまとまった毛が特徴で、表皮から皮下組織まで貫くように生えています。
そのため革にも毛穴が残り、良くも悪くも少し目立ちますが通気性が良いのが特徴。
軽くて薄い割に丈夫で通気性が良いことから、鞄や靴の裏地などに重宝されます。
最後に和歌山です。
皮革産業は最も古い産業であり、徳川家の武具を手がけていたこともあったようです。
その後も続き、近代皮革産業の発展に大きく貢献していきます。
これは明治に入り、和歌山藩の軍政改革により皮革製の軍用品を自分たちで用意しようとしたことがきっかけとなりました。
軍靴の需要が高まり、西洋沓伝習場を作り海外から靴細工師などを招聘。
技術力を高めていったことで専門性や加工技術に特化していったわけですね。
そして特徴的なのが、製造では分業するのが一般的なところを一社で全工程を行う企業が多いことです。
この辺りは、先の近代化の件によるところなのでしょう。
ヌメ革や床革、エナメル革など専門化して特徴を出し、技術力が受け継がれていっています。
その中でも特にエナメル革は和歌山で研究開発を手がけて、日本で初めて企業化され発展したことが有名です。
以上、皮革の製造産地を上げてみましたが皮革製品となると様々あります。
例えば、北海道には馬具、香川には革手袋、岡山には刀剣の柄、兵庫には鞄などがあります。
もしかしたら皆さんの中に、近くで馴染みがあるという方もおられるかもしれませんね。
それでは、また来月。