やんごとない麻。

思いのほか雨も降らず、真夏日が続いていますが、そもそも梅雨入りしてましたっけ?関東はまだでしたかね。

さて、繊維原料を季節で区切るというのは、あまり個人的にはおすすめしておりませんが、一般的に夏場は『麻』っていいよねって雰囲気ありますよね。

繊維品質表示上の『麻』で一番流通しているのは『リネン』かと思われます。
よく聞きますよね『リネン』って。リネンは亜麻(あま)と言ってアマ科の植物です。リネンは靭皮繊維って馴染みのない言葉ですが、植物の茎から採れる繊維です。
鈍い黄金色でベージュともグレージュともいった感じの上品な色味を亜麻色など言ったりしますが、つまりリネンの天然色のことです。

次いで麻繊維で有名なのは『ラミー』です。これは苧麻(ちょま)と言ってイラクサ科の靭皮繊維です。リネンに比べて天然色では白味が強く、繊維も若干太めなのでサラッとした印象の繊維です。

そして『ヘンプ』これは大麻です。色々な規制がかかりやすい原料ですが、実はみなさんが『麻繊維』と聞いてイメージする植物の多くはこの大麻の葉っぱの形のやつです。でも衣料品繊維で今一番多く使われている麻繊維は先にも述べたように『リネン』です。

なので、生地を選ぶ時に生地屋さんから提案もらったりすると、繊維品質のところに『L』と書いてあったりしますが、それはリネン(Linen)の『L』なので麻ではありますが、ほとんどがリネンという意味が伝わるかと思います。

麻繊維のほとんどは、綿やウールなどと違い、繊維にほとんど伸度(伸び)がありません。この性質は様々な着用デメリットを生みやすい(シワになりやすいなど)ですが、それが麻の味として多くの服好きな人たちから愛されている繊維です。
人類が布を身に纏うようになった初めの繊維が『麻』と言われているように、実は人間の生活と古くから関わっている繊維だったりするので、麻繊維専門のブランドや生地屋さんが生まれているのも納得です。

神事などにも麻の活用が見られることから、やんごとねぇなって感じる時もあったりします。

かなり強度が強い繊維でもあるので、実はアウターの表地に向いていると個人的には考えています。ウールのインナー利用が通年向いていると見直されているように、麻も繊維は中空だし、テイストとしてのイメージ、アイテムと生地感のマッチさえクリアできれば通年で使用できる優れものなのではないかと考えているところです。

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山本晴邦
About 山本晴邦 18 Articles
新潟県、佐渡市の達者という小さな集落にて生まれ育つ。 縫製業を営む母に影響を受け、高校卒業後に洋裁専門学校へ進学。 専門学校在学中に和歌山の丸編み生地工場の東京営業所でアルバイトに付きそのまま就職。 工場作業から営業まで経験し13年間同社にお世話になり独立。ulcloworksを立ち上げる。 原料から糸の作り方、生地の編み方や染め方を常に探求して日々研究に勤めている。 業界の将来に繁栄をもたらすにはどうしたら良いのかを常に考えている。