菌糸体素材と皮革素材が切り開く未来はどんなものなのか?

こんにちは、タニグチレイです。

ここ数年、皮革の代替素材となる新素材はたびたび話題に上ってきました。
最近では、カリフォルニアを拠点とする企業マイコワークスとエルメスの共同作業により、革の性質を模した新素材を使用したバッグの情報をご覧になった方も多いと思います。
「Sylvania」と名付けられたmycelium素材をキャンバスやカーフと共に使用したバッグは、きっと美しい仕上がりなのでしょう。

他にも、サンフランシスコを拠点とする企業ボルトスレッズもアディダスやステラ・マッカトニーなどと協力体制を取ってきて、いよいよ製品化されてきています。
こちらは「Myro」と名付けられたmycelium素材であり、ステラ・マッカトニーのウェアやアディダスのスタン・スミスなどが登場しています。

ここでひとつ気になったことがあります。
メディアによってはこれらのmyceliumを、人工レザーとして紹介しているものがいくつかありました。

これらの素材は皮革を模した代替素材であって、人工皮革とも違うバイオテクノロジーによる新素材です。

ここでmyceliumとは何か?
「Mycelium」は「菌糸体」と訳されています。
菌糸体を知らないのでWikipediaを参照させていただくと、

”菌糸の集合体のことであり、糸状菌の栄養体そのものである”

とあります。

んーよくわからないので「菌糸」を同じくWikipediaで調べてみると、

”菌類の体を構成する、糸状の構造。カビやキノコなどは、主に菌糸が寄り集まったもので構成される”
”椎茸を例えると、樹皮状に見えているものは菌糸で構成された子実体という構造であり、本体は幹の中に広がる菌糸である”

などとあり、身近なものとようやく連想できました。
(菌糸のことは当然知っているよという方ごめんなさい)

ということで、バイオテクノロジーの進化によって新しい可能性を持つ素材が生み出されたことがよくわかりますね。

Myroに関しては、下記がボルトスレッズのオフィシャルです。

Mylo

この中の一文に

”Mylo is a sustainable alternative to leather that will become available to the world through our consortium partners.”

とあり、

Myroは革に変わる持続可能な代替(素材)であることがわかります。

そして、下の方にスクロールしいただくと

“Is this leather?”
“No. The term “leather” is reserved for animal hides, and animal hides are made of collagen.Mylo™ material is made from mycelium and does not contain any collagen.”

とあり、コラーゲンから成る動物の皮から作られる革ではないことも丁寧に説明されています。

次にマイコワークス。

Our Products

“Fine Mycelium is a breakthrough in materials science and biotechnology that refers both to MycoWorks’ proprietary process and to the class of materials that are exclusive to MycoWorks.”

どうやらマイコワークス独自の技術によって生み出される、このFine Myceliumの素材はまた違った菌糸体素材のようですね。

“Fine Mycelium is not “mushroom leather” or “vegan leather.”
“Our flagship product is Reishi, a premium, natural option made from MycoWorks’ proprietary Fine Mycelium technology.”

マッシュルームレザーともヴィーガンレザーとも違う。
主製品であるReishi。
もう少し読んでみると、このReishiはスペインのタンナーで鞣され仕上げられるとあります。

革の鞣し技術を活用できる新しい異素材。
革製品に使用されて製品化されたものを、実際に見て触れてみたいですよね。

このように組成が違う新しい素材なので、人工レザーと表記するのは違和感がありませんか?
(人工皮革は、表面だけでなく内部構造も天然皮革に似せて作られた人工材料)
そして、食肉の副産物として古来より活用されてきている皮革を全て代えれば良いのとも違う。
皮革、人工皮革、合成皮革、菌糸体素材(皮革をあえて使うならば代替皮革?)などの素材がこれからの未来に適応して、製造されていくことでしょう。
ブランドやデザイナーの意向によって適した素材が使用され、製品によってそれぞれに適した素材が使用されていくことでしょう。
それにテクノロジーの進化でまだまだ色々と素材も出てくるでしょう。

何か偉そうなことが言えるわけではありませんが、皮革に関連する素材や環境をフラットに多面的に見ていきたいですね。

ちなみに、下記は以前に投稿した合成皮革と人工皮革についてです。
改めて読んでいただくとそれぞれに違いが明確になると思います。

合成皮革と人工皮革って何が違うの?

それでは、また来月。

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谷口玲
About 谷口玲 221 Articles
1976年3月生まれ。 販売員歴18年。 メンズはヨーロッパ系デザイナーズセレクトショップと英国デザイナーズブランド、レザーグッズブランドで販売。 レディースはミセスセレクトショップとドメスティックデザイナーズブランドで販売。 今まで大阪、神戸、京都、広島、札幌、東京、横浜などの百貨店を中心に店頭に立ち現在はフリーランスの販売員。