ちょっと気になる『素材』のはなし

日曜日、トップ画像のにゃんこのようにまどろんでる方も多いでしょうか。

今日は日曜日のテンションで肩肘張らない素材の話でいきたいと思います!

結構どぎまぎしますよね、「知らないのかよ!」って言われることも多いので。

 

先日、尾州の機屋さんとお話しする機会がありました。

日本の産地は疲弊している、という中でもまだまだ頑張っている尾州。

海外ブランドも尾州で生地を買い付けたりしていますね。

お打ち合わせ中、生地屋さんとデザイナーが面と向かったときの定例とも言っていい

「最近の業界の人は生地を知らなすぎる」

ということをおっしゃっていました。

デザイナー・企画はもう耳にタコができるほど言われている方も多いとは思うのですが、

クイックで価格勝負だった数年前。

企業は工場への研修や見学をなくしてしまいましたし、デザインという外見だけを短サイクルで作るということに従事してしまいました。

わたしも会社員企画時代は、コレクションとMD構成のめまぐるしさ、お店のVMD、紙や広報、ネットのチェックやスペック指示などほとんどが企画に降ってくることも多く工場に行くというのは叶いませんでした。

中には自社のミーティングルーム外での打ち合わせ禁止というところもあり、夢のまた夢でしたね。

先日会った機屋の社長も最後に付け加えて「そういう時代だったからね」とおっしゃっていました。

 

販売員も企画も、まずは目の前の商品について

 

企画・販売含め、まず向き合うべきは目の前のお客様とその商品。

ブランドによって使う素材は明らかに変わってくるので知らないことがあるのは当然です。

味があっていいよね!なんて言われる麻は、OLさん向けのブランドではほぼNGですし、ワッシャーなんて「味」ではなく「(よくない)シワ」で一刀両断です。麻シャツを定着させるのには数年かかりました。

他にもトリアセテートは値段が上がる上にちょっと年齢が上に見える、などなど。ブランドやターゲットごとに細かい感覚はありますが、これもマーケを経験してこそでしょう。

生地屋さんと対等に話す生地の知識を仕入れるのは、当然ですがすぐには無理。

先日南さんともTwitterでやりとりしたのですが、

 

という感じで認識が微妙にずれていたりするんですね。

これも素材がわからなくなる原因の一つです。

生地全体のことを、全部正しく知ろうとするとこの問題に行き当たります。

なので、生地には生地のプロフェッショナルがいます。

もちろんそこまで熟知できていれば一つの武器にはなりますが、私たちがパフォーマンスを第一に見せるべきは生地屋さんではなくお客様で、お客様に受け入れられた結果、生地屋さんにもリピートがかけられたりするわけです

私たちが持つべきは、まず商品とお客様へのプロ意識ですよね。

デザイナーだけでなく、販売も、ブランドに関わるすべてのスタッフに言えるのはこれだと思います。

 

シンプルズで起きる素材の同質化

 

先日エディターさんが使っていたシンプルな装いやデザインを好む人たちのことを表現した「シンプルズ」の言葉がすごく気に入ってしまったのですが。

東京のシーンを見てみると、ここ数年高価格帯のシンプルズが飽和してきていますね。

個人のドメブランドも上質素材を謳ったシンプルな服作りが多く見られます。

ここで気にするべきがトウキョウベースでしょうか。

数年前、まだ彼らが出たての頃に三日徹夜明けでリサーチに行かされ「はー小洒落たお店〜エンフォルドの新業態?」と思ってフラフラ試着室入ったらSTUDIOUSで「誰やねん」となりました。

でも周りのOLたちに聞き込みをすると、多いんですよ。STUDIOUSユーザー。

https://www.fashionsnap.com/the-posts/2017-07-19/tokyobase-city-spa/

以下本文抜粋

30~40代レディスに向けた高級・上質素材使いのモード服で定着を目指す。

特徴は、オリジナルSPAブランド「ユナイテッドトウキョウ」で成功した原価率50%の物作り。特に素材を重視し、使用する素材は小売価格の20%を基準にする。海外ラグジュアリーブランドと同水準の生地を使い、旬のモードトレンドを盛り込んだ大人服とする。

原価率50%の部分や他にも気になる部分はありますが、そこはとりあえず置いておいて。、

”シンプルで素材がいい”を売りにしたときに「ユニクロ」とは差別化ができそうだったとして、セレクト感があるトウキョウベースのこの取り組みとはどうでしょうか?

まだ”縫製”は残されてますが決定打には少し弱いですね。

全体を原価率50%は卸を考える個人のブランドではどう頑張っても難しい。

プロパー売りでギリギリの芸当ですし、値段も抑えてくることでしょう。

素材を打ち出してきた東京ブランドも、もう一捻り、打ち出しを考えなくてはならない。

その時に、「商品の素材のことをちゃんと説明できる」は当然必須項目となるでしょう。

機屋さんの方でも「最近は、ものづくり、素材の方にSPA大手も思考が寄ってきているから、そちらが時代のスタンダードになりそう」という話が出ました。

企業としても私たち個人としても、今一度、川上に立ち返る時がきている気がします。

 

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中溝 雪未
About 中溝 雪未 69 Articles
1990年生まれ。コレクションブランドの企画室でインターンからデザイナーアシスタントとして勤務。その後アパレルブランドで布帛・ニットをはじめとするデザイナーの経験を積み独立。現在フリーランスとして企画・デザイン・パターンを担当。 プロダクトアウトなものづくりからマーケットインまで、偏らないバランス感覚を武器に、コンセプトメイクからお客様に届くまでをディレクションするプランナーとして業界を問わず活動中。