ブランドは「何をやらないか」の意思決定してますか。

淡々と送られてくる秋冬物。

そう、展示会に呼んでいただいたブランドさんでつけた商品たちがぞくぞくと届いています。

とうとう佐川の兄さんに「結構平日いらっしゃらないので、まとめてもってきます」と言われる始末。

いつも本当に、ありがとうありがとう・・・。

北海道出身なので上京したての頃、夏は外に出ることが何よりの恐怖体験でしたが、すっかり東京ナイズされた私の身体。どんな季節だろうが、展示会にはお声掛けいただいたら極力赴いて、触ったり世界観を見たりしています。

インスタなどのSNSでももちろんチェックはするのですが、服は着た状態の静止画だと案外誤魔化せてしまう。

もしくはSNSというブランドの世界観の中でだけ見れば完成されているのだけれど、いざ日常に落とし込むとデザインがtoo muchだったり、もしくは写真で見るほど差別化がされていなくてピンとこなかったり。

そういう部分はやっぱり、直接見て触ってみて気がつく発見です。

トップセラーの読者の方々は私よりもぐっと経験をお持ちの方が多いと思いますが、

デザイナーさんのお話しを聞いたり、商品に触れたりして思った「あれ?」の部分を書いてみたいと思います

 

ストーリーを売る、世界観を売る?

はい、わかります。言いたいことはとてもわかります。

でも、ブランドの商品は”服”です。

残念なことに世界観やストーリーの構築をする特別感はもう、私たちだけのものではない。

ストーリーを通して売らなくてはならないのは、服、商品です。

SNSで発信する世界観や写真のルックブックなどを見るのに、ユーザーは課金していますか。

服を売るためのストーリーでなくてはならないのに、ストーリーが先行している例をよく見かけます。

ユーザーとのタッチポイントとして、SNSが自ブランドに不向きと判断するのならば「発信メディアを絞る」のも一つの手です。

 

ブランディングをする?

大切なことです。大切なことなんですが、ブランディングをするということは=かっこよくするということだけではないということはきっと、肌で感じているはず。

それはブランディングの一面にすぎないということ。

「かっこよくする」という曖昧さでブランディングに臨んだ場合に起こるのが、ブランドにキャッチコピーをつけようと思った時に、「耳障りのいい言葉を並べただけになる」と感じました。

もうこれは痛々しいほど、感じました。「やわらかくフェミニン」とか「戦う女性を応援する」とか。

先週の記事とも重なりますが、じゃあその人たち、どこにいるの?という話で。

「OLさん」とかぽろぽろ断片的に言葉は返ってくるものの「じゃあその人たちに対して新しい価値ってどこ?」という。

究極にいうと、もっとマーケティングに寄る仕事で悩み始めると、「◯◯といえば△△」までシンプルに絞ります。

ブランドビジネスはもう少し風情があった方がいい場合もあると思うので、これをC向けにオープンにする必要はない場合もありますが、ブランディングとして大切なのは外見より内面がどれだけしっかりしているか。(恋愛・・・恋愛なのか・・・?)

年収と顔だけで結婚決めようとしてる友人に心から伝えたい。

 

前提を疑った方がいい

 

これは何事においても言えることだと思うのですが、前提を疑うこと、というのはビジネスにおいて非常に大切なことだと思います。

例えば私は、専門学生時代に一時期、学校の特性もあり、「デザイナーは独創的で造形的でなくてはならない」と思っていました。しかし現実ではそれだけで売ることはできないし、デザイナーで居続けるためには売らなくてはならない。

そのときに「デザイナーは独創的で造形的でなくてはならないのか?」とまず前提を疑い、実際にこの目で確認しようとコレクションブランドのインターンに行きました。

その場所で学んだのは「独創的で造形的な服を作ることだけがデザイナーではない」という前提に変わりました。

また同時に、「学校での評価が就職を左右する」という前提も覆され、「世の中は驚くほど学校の評価が社会の評価に繋がらない」ということを知りました。

ビジネスも同じで「売り上げをあげなくてはならない」という前提を疑うこともまた一つの形です。

利益を得ることは必要です。でも、じゃあその規模感はいかほど?

本当に、戦う相手はファストファッション?

メディアに流されてない?

そういうことを疑ってみると、悩みの解決策になることも。

 

何をやりたいかはわかった。じゃあ何をやりたくないの?

 

前提を疑うことと同じく、大切なのは「何をしないか」を決めること。

SNSの取捨選択もそう、ブランディングも何をするかよりも何をしないかを考えるとかなり明確に見えてきます。

何をやらないか、何が自分のブランドには必要ないか、ユーザーはこれに何を求めないか。

よく商品作りをしていても出くわすのは、「あれもいいんじゃない?」「これもいいんじゃない?」

「いいよいいよ、いいものなんだからこれもやっちゃおうよ」というやっちゃおう軍団!!

そして販売先からの意見を持って帰ってきてくれる営業の「これやったら売り場は喜ぶと思うんだよね」

これには

「やだ!

と言い切ることの方が圧倒的に多いです。(たまに素直になることもあります。

それがいくらいいもの、いいこと、であっても、その商品を買うユーザーにとって付加価値としてつけないと決めたものは絶対につけない。

「初心者に向けた」なら「初心者がちょっとでもつまづきそうなものはつけない」です。

やらないことを決めないで、あれもこれもとやると、その商品がなぜ売れてなぜ失敗しているのかだれもわからなくなります。

 

 

もう少し、「やらないこと」を明確に可視化するだけで、また前提を可視化して疑ってみることで、運営ややり方について違う切り口が生まれるかもしれないなあと思うのでした。

 

 

 

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中溝 雪未
About 中溝 雪未 69 Articles
1990年生まれ。コレクションブランドの企画室でインターンからデザイナーアシスタントとして勤務。その後アパレルブランドで布帛・ニットをはじめとするデザイナーの経験を積み独立。現在フリーランスとして企画・デザイン・パターンを担当。 プロダクトアウトなものづくりからマーケットインまで、偏らないバランス感覚を武器に、コンセプトメイクからお客様に届くまでをディレクションするプランナーとして業界を問わず活動中。