アパレル企業も初任給だけが高くて昇給のない会社もある

トウキョウベースが大卒初任給を25万円にしたことが話題となっています。景気に対する見方は様々ありますが、緩やかに回復基調にあることは間違いありません。

先ごろ、政府がGDPの伸び率を発表しましたが、年率換算4・0%増という高い伸びでした。これまでなぜか政府も企業もマスゴミもこぞって、日本を「輸出立国」だとしてきましたが、今回の高い伸び率は内需拡大によるものです。輸出はあまり振るわなかったのですが、内需の高い伸びがそれをカバーした形です。

ついでに言っておくと、我が国のGDPに占める輸出の割合は20%ほどしかありません。圧倒的に内需で成り立っているのです。

それはさておき。

ようやく、給与水準も上昇の兆しが見え始めました。

トウキョウベースの初任給25万円というのはその一つの例でしょう。

また横道にそれますが、我が国はこの25年間ほとんど物価が上昇していません。その証拠に初任給はその当時とほとんど変わりません。

しかし、僕が働き始めた90年代前半当時に、父親の初任給を聞くと7万円程度だったといいます。
僕と父親は26歳差なので、26年間にそれだけ物価が上昇していたということです。

一方、この25年間は初任給はだいたい20万円前後のままです。物価が25年間ほとんど上がっていないということになります。

現在就活中の学生さん、これから就活に臨む学生さんに一つ、オッサンからのアドバイスがあります。

就職を決めるにあたってできるだけ高い初任給の会社を選ぶことは当然ですが、実はそこにこだわりすぎるのも落とし穴になってしまうことあります。

初任給以上に重要なのが、昇給がどれだけあるか、もしくは昇給の条件がどれだけ明示されているかです。

というのも、アパレルに限らず一部の超一流企業を除いては、日本には昇給条件や昇給モデルが不明瞭な企業が多いのです。とくにベンチャーや中小企業はほとんどが不明瞭です。

仮に初任給が25万円あったとしてもその後昇給がほとんどなかったらどうですか?

結婚はできるかもしれませんが、子育ては到底無理でしょう。良い悪いは別にして家を買うことも無理でしょう。

体験談を話すと、これはアパレルではなく、大型展示会の主催会社にいたころのことです。その会社は中途採用が多く、中途の初任給は全企業にプラス20%増ほどもらえます。しかし、その後の昇給はほとんどなく、毎年「月額2000円」アップしていくだけとなります。

仮に初任給で30万円もらったとしても翌年の昇給は2000円ですから、30万2000円になります。その翌年は30万4000円。1万円昇給するのに5年もかかることになります。

こういう会社は日本国内に珍しくありません。中小規模のアパレルは特にこういうことが多くあります。

初任給を20万円から25万円に増やすことは実は企業にとってそれほど負担ではないのです。しかし、毎年月額1万円を昇給させることは企業にとっては大きな負担なのです。

毎年12万円ずつ増えていくことになりますから。

ですから、初任給を高めに設定してその後昇給させないという会社が多いのも理解できなくもありません。ですが、そういう会社はできる限り避ける方が賢明です。

毎年、1万円ずつ昇給とか、売上高を〇〇万円獲得すればその3%を還元する、とかそういう昇給条件が明示されている企業を選ぶ必要があります。

初任給はそれなりに高いけど昇給できない企業というのが想像以上に多いということを学生の皆さんはぜひ覚えておいてください。そしてそういうところに引っかからないように気を付けてください。

こちらからは以上です。

 

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】