立場によって定義が異なっているオーガニックコットン製品

国内にはオーガニックコットンの協会が実は2つあります。
そしてその協会がそれぞれ打ち出している定義は異なります。
このため2つの協会はお互いに反目しあっているのが現状です。

オーガニックコットンが肌荒れやアトピーに効いたという人が少数存在するからそれを認めろという愚見もあるようですが、科学的にデータがないのでそれを吹聴することは薬事法に違反します。

オーガニックコットンはそういう機能、効能のために栽培されているのではなく、農薬や化学肥料、枯葉剤を使わないことでの環境に対する負荷を下げるという社会運動ととらえるべきでしょう。

しかし、コットン自体が生育するためには大量の水を必要とするので、コットン自体の栽培がエコではないという指摘もあります。

さて、協会によって定義が異なるためにオーガニックコットン関係者の意見も様々です。

有機栽培された綿花というところまでは共通していますが、そこからは各社・各人・各ブランドによって異なるのです。
例えば、一番ライトなのは無印良品のオーガニックコットン製品でしょう。
安価でもあります。
しかし、この製品は別の論者から見るととんでもないということになります。
黒や紺などの濃色を化学染料で染めているのです。これでは意味がないと捉える人もいます。

別の見方からすると、オーガニックコットンを広めるためにはこういう方便もありじゃないかという意見もあります。

サンウェルが展開していたオーガニックコットン生地もそういう思想に基づいて企画製造されています。

一方で、オーガニックコットンはトレーサビリティーが確実なものでないと意味がないという意見もあります。
農園まで特定できないまでも国やその国の地方までは特定できるべきで、他国産の綿花と混ぜるべきではないという意見です。
これはこれで一利ある気がします。

一方でどんな商材でも価格の下をくぐるものは出現します。
無印良品の商品もその一つといえます。
他方、オーガニックコットンの落ち綿を集めてそれで糸を作り、生地を織り、安価で販売する生地工場もあります。
紡績する際にワタがいくらかこぼれますからそれを拾い集めてまた紡績するのです。

一見するとオーガニックコットンには違いないと思いますが、落ち綿を集める際にホコリやチリが絶対に交じります。
ヤマザキパンの無菌工場くらいの環境でなければ絶対に交じります。
そんな紡績工場があるでしょうか?

じゃあ、そのチリが混じった生地がオーガニックコットンとしてふさわしいのかという意見もあります。
ましてや世界各国のオーガニックコットンが混じっており、これはどうなのかという視点もあります。

パタゴニアが使っているからいいものだという意味のわからない意見もありますが、パタゴニアは暴力集団シーシェパードを支援するほどのエコ教団です。同じ論調でいけばパタゴニアが支持しているからシーシェパードは正しいと認めるのでしょうか?

オーガニックコットン製品もさまざま出回っていますが、その内実もさまざまです。
統一された企画と定義に基づいているものではないのということはあまり知られていません。

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】