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こんにちは。南です。
今は洋服が売れにくくなっています。売れないとは言いません。実際それなりに洋服は売れているから。売上高がゼロにはなっていないから。ピーク時よりは減ったといわれますが、それでも年間9兆円前後も洋服は売れています。ただ、売れ方が昔と変わってきているのは確かです。
ワールド、オンワード樫山、TSIホールディングス、三陽商会、イトキン、ファイブフォックスなどの旧大手アパレルは苦戦し続けており、大規模な閉店を打ち出しています。
「並べたら売れた」時代の感覚が抜けきらずに同じことを繰り返し続けた結果です。
これらの旧大手に共通することが、好調なブランドの後追いをすることです。彼らの理屈からすると「他社で実績が出たから失敗しにくい」ということなのでしょうが、逆にいうと、相手と同じ土俵で戦うことになります。この相手が零細企業なら規模の論理で勝てますが、相手の規模が同等かそれ以上なら後追いした側が確実に負けます。
ランチェスターの法則というものがあります。
小集団が大集団に勝つためには一点突破、大集団が小集団に勝つためには物量を生かして徹底的に追随すること
という内容です。
相手の規模が同等かそれ以上だと、自分たちが小集団ということになります。小集団が勝つためには一点集中主義が必要ですが、追随主義では逆に自分たちがやられてしまいます。
個人的にぼくは、旧大手の追随主義を「逆ランチェスター」と呼んでいますが、旧大手アパレルはこの15年間、逆ランチェスターを繰り返して凋落してしまいました。まあ、当然の負けではあるのですが。
旧大手が追随する相手は大概の場合がユニクロです。
しかし、現在のユニクロは国内だけで7800億円もの売上高があり、ワールドやオンワード樫山の2・5倍の巨大勢力です。ユニクロに追随した場合はもれなく「逆ランチェスター」が発動しますが、どうやら彼らはそれに気が付いていないようです。
98年のユニクロフリースブーム当時はユニクロも今ほどの大規模ブランドではありませんでしたが、彼らに比べて小さすぎるという規模でもありませんでした。しかし、彼らはなぜかユニクロに追随することを選んだのです。
98年の1900円フリースブームのころ、浮足立った旧大手は、低価格フリースを急きょ発売したのです。旧大手の中には挙げませんでしたが、彼らよりももう少し規模の小さいフランドルという会社があります。例えばフランドルは何を血迷ったのか、急きょ2900円のフリースジャケットを「イネド・オム」からその当時発売したのです。しかも百貨店内のテナント店舗で。なぜ、ユニクロに追随しなくてはならなかったのでしょう。当時のユニクロは今ほど洗練されてはいませんでしたから勝ち目があったと判断したのだと思いますが、百貨店に来るお客は2900円のフリースがほしいのでしょうか?自店の顧客層を見ていればそんな判断は下せなかったと思います。
時は流れます。
この間にユニクロはさらに巨大化し続けています。2010年ごろのことです。ある素材メーカーに旧大手アパレルのエライ人が飛び込んできます。その要件というのは「ユニクロでバカ売れしたあの商品と同じ素材を売ってくれ」というものです。これには呆れ果てるほかありません。
同じ素材を使っても、製品としてのデザインが異なり、販売価格が異なり、自店の顧客層も異なり、店舗立地も異なります。ユニクロのように何十万枚と売れるはずがありません。ユニクロは3900円くらいでその商品を発売しましたが、旧大手の販売価格だと最低でも1万円前後になります。1万円の商品が3900円と同じような売れ行きになるわけがありません。子供が考えてもわかりそうなものです。
このエライ人は本部長とか役員クラスだったそうで、そのレベルの人がそんな高い地位にいる会社なので、業績が下向くのは当然といえます。
同じ傾向は大型スーパーにもあります。ヒートテックが流行れば保温肌着を、エアリズムが流行れば吸水速乾肌着を、ウルトラライトダウンが流行れば軽量ダウンを、と、見事なまでの後追い政策です。総合的に見れば大型スーパーのほうが売上高がユニクロよりも大きいですが、洋服部門の売上高で見るなら各社ともユニクロに遠く及びません。これも「逆ランチェスター」です。
大型スーパー各社の大苦戦も当然の結果といえます。
現在、国内にはユニクロより大きな衣料品ブランドはありません。すべてのブランドはユニクロの前では等しく「小集団」になります。小集団がユニクロに勝つためには、何かで特徴を出した「一点突破」しかありません。ビジネスは勝ち負けではないですが、価格競争に巻き込まれずにブランドや店を存続させるためには「一点突破」を考えるしかありません。
では、個々の店、その店で働く個々の販売員さんが実現できる特徴、個性とはなんでしょうか?今はそれを考えることが求められているのではないでしょうか?
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