染料?顔料?革の染色と仕上げでどう変わる?

こんにちは、タニグチレイです。

今まで革の種類(エキゾチック系を除く)や鞣し方法などをざっくりと書いてきました。

いずれ製革工程も書きますが原皮の水漬け〜中略〜鞣し〜染色〜加脂〜乾燥と行い、その後の処理のことを仕上げといいます。
革の外観や物性、耐久性、機能性など改善したり素材の商品価値を高めることを目的としたものです。

原皮〜鞣し〜仕上げによって様々な革を作り上げる重要な最後の仕上げ工程。

そこで今回はまず染色とその後の仕上げの中でも着色の仕上げ工程を少し書いていきたいと思います。

 

染料による染色は革の線維にまで浸透させる着色方法

染料とは革を着色するために用いる色素です。
一般的には水に溶解する水溶性のものが多く用いられます。
その中には酸性で固着する酸性染料や陽イオン性を示す塩基染料(陽イオン染料)などがあり着色の向き不向きや特徴の違いがあります。
他にもアルコールに溶解するアルコール染料など種類は豊富にあり鞣した革に合わせて選んでいくわけですね。

そして特徴としては革の表面の質感を覆い隠さずに着色できることであり革本来の風合いが失われることがないことです。
これは革の線維まで浸透させる方法だからこそというわけです。
経年変化を味わえるのもこのためであり天然素材ならではの良さが活きてきます。

 

ただその分原皮のバラ傷や血スジ、虫刺されなど目立ってしまうことも考えられます。
これはデメリットと捉えるかひとつずつ表情が違うから天然素材の良さがあると捉えるかは正直どちらもあるでしょうね。

 

また色ムラや色落ちなど起こり得るのでその辺りは扱う上での注意も必要になってきます。
これは染料(顔料)の色素の分解や移動による退色や変色であり、鞣剤や加脂剤の劣化による変色、革線維の理化学的変化です。
主な要因としては紫外線や酸性・アルカリ性物質による色素の分解や摩擦、汗、水などによる色素の移動などが考えられます。
この辺りも製品として仕上がった革ならではの特性と捉えれば手入れをしながら変化を楽しむことはできますよね。

仕上がった表情も使い込んだ変化も革製品特有のものであるだけに最大限に良さを伝えたいところです。

 

ちなみに着色の向き不向きがあると書きましたが簡単に補足を。

酸性染料:クロム革の染色に広く使用される。羊毛や絹、ナイロン等の染色に使用される。
酸化染料:毛皮の染色に使用されることが多い。白髪染め、頭髪の染めにも使用される。
塩基染料:植物タンニン革には染まりやすいがクロム革は直接には染まりにくい。
反応性染料:染料が線維から離脱しにくいアルカリ性と高温によって促進される。
リン酸化染料:クロム、ジルコニウム鞣剤と強く結合。濃色染めも可能。
アルコール染料:耐光性が良く耐水性がある。

など種類によって特徴があり相性の良いものや仕上げたいイメージによって選ぶわけですね。
これは製品を見たところでわからないですから染料によって違うということだけなんとなく思っておいてください。

そしてここからは仕上げ工程にいきます。

 

顔料仕上げは革の線維に浸透させず表面を覆う仕上げ方法

顔料は水や有機溶剤に不溶で科学的、物理的に安定した色素です。
この顔料、合成樹脂、塗料溶液で仕上げる方法を顔料仕上げといいます。
いわゆる塗装のイメージで革の銀面のキズなどを隠して均質な着色ができる。
つまり革の自然な表情は隠れるが革の地色に関係なく発色の良い色付けができ品質が安定するわけですね。

塗装膜の厚さは比較的厚いので耐久性も良くなり表面が隠れるので少し等級の低い革であっても問題ありません。
また色落ちや色移りが起こりにくいので身につける革製品には向いているかもしれませんね。
変化の理由は上に書きましたが革線維の理化学的変化です。
顔料によっていわば表面をコーティングしているようなものなので変化が起こりにくいのは想像できますね。

 

メリットとすれば発色の良さを気に入った場合あまり色の変化が起こることなく使用できること。
エイジングを楽しむことはできないですが変わって欲しくない方には良いことと捉えることができます。
人それぞれにメリットともデメリットとも感じるところでしょうね。

 

アニリン仕上げは銀面の特徴を活かし透明感のある塗装膜を作る仕上げ方法

顔料を含まず合成染料とタンパク質系のバインダーと呼ばれる造膜成分から成る塗料を用いて仕上げる方法。
きめ細かで発色が良く自然な風合いを残した仕上がりになるものでアニリン仕上げといいます。

透明感のある塗装膜なので革本来の表面の質感がしっかりと出ます。
そのためキズがなく繊細な銀面模様の革に適用されます。
つまりかなり等級の選別はされているでしょうね。

ただし塗装膜は耐水性が低く耐久性も劣る場合があるので取り扱いに注意が必要になることが考えられます。
美しく革の表情を存分に堪能できるからこそ手入れをしながら使っていくと愛着が増す。
こちらもこちらで人それぞれにメリットともデメリットとも感じるところでしょうね。

 

ざっと染色と仕上げ工程の一部である着色について書いてみましたが特性を理解すれば扱い方や手入れなども想像しやすくなります。

しっかりとお伝えできると選ぶのも安心してもらえそうですね。

他にも染色技法はたくさんありますがそれもまたいずれ書いてみたいと思います。

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谷口玲
About 谷口玲 221 Articles
1976年3月生まれ。 販売員歴18年。 メンズはヨーロッパ系デザイナーズセレクトショップと英国デザイナーズブランド、レザーグッズブランドで販売。 レディースはミセスセレクトショップとドメスティックデザイナーズブランドで販売。 今まで大阪、神戸、京都、広島、札幌、東京、横浜などの百貨店を中心に店頭に立ち現在はフリーランスの販売員。