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早いもので今年ももう終わります。おっさんになると本当に時間が過ぎるのが速く感じます。光陰矢の如しとはよく言ったものです。
さて、今年のアパレル業界を振り返ってみたいと思いますが、悪いニュースがほとんどでした。
まず、カジュアルのWomb(ウーム)の経営破綻。民事再生法を申請して先日、再スタートが決まりましたが、新興カジュアルショップでさえ、あっという間に経営破綻に追い込まれるという恐ろしい業界情勢が浮き彫りになったといえます。
その次がイトキンの経営譲渡です。創業家の辻村家が経営から手を引き、投資ファンドのインテグラルへ身売りしました。老舗の大手アパレルとして知られていたイトキンですが、この10年間はヒットブランドもなく、新しい施策も打ち出せずジリ貧の状態が続いていました。
昨年にはメイン銀行も手を引き、大手商社も手を引いたことが業界内では知れ渡っており、万事休すの状態にありました。現在はファンド傘下で経営再建に取り掛かっていますが、今のところ目新しい目玉政策はなく、このまま縮小均衡の状態が長く続くのではないかと考えられます。
外資も撤退が相次ぎました。本国の経営破綻に伴ってアメリカンアパレルの日本法人が解散になり、直営店も閉鎖となりました。
シンプル・低価格で一世を風靡したアメリカンアパレルでしたが、ブームは長く続きませんでした。アメリカ本国での評価はどのようなものだったかはわかりませんが、日本では2010年以降はほとんど存在感はありませんでした。商品的にも品質は低く、デザインがシンプルな割には、ジーユーやH&Mなどと比べると価格が高めだと感じられました。消費者が離れたのも当然といえるでしょう。
次はシンガポール発の低価格シューズSPA「チャールズ&キース」の全店閉鎖です。ハイヒール、パンプス、一部サンダルとバッグというようにキャリア女性をターゲットとしたブランドで価格は4900円中心でしたが、正直なところ日本市場での存在意義はなかったと思います。彼らが思っているほど価格は安くなく、5000円のパンプスなら近鉄百貨店で毎日のように特価品として販売されています。
また、日本ではそこまで正装して働く女性は多くありません。欧米のようにパワースーツにヒールを着用する女性はほとんどおらず、カジュアルとスーツの中間形態の服装が主流です。このため価格的にもテイスト的にも日本市場には必要なかったといえます。また合弁相手だったオンワードの販促の不味さもさらに認知度を高めることの妨げになった部分も大きいと感じられます。
イトキンにしろオンワードにしろファイブフォックスにしろワールドにしろ、旧大手百貨店向けアパレルの販促手法は一昔前のままです。ウェブやSNSにはまったく対応できていない上に、部数激減が著しいファッション雑誌に特化したままです。はっきりと言ってドブに金を捨てているようなやり方です。このやり方を踏襲する限り浮上はありえないでしょう。
そして、三陽商会の大幅赤字計上と社長交代です。
看板ブランド「バーバリー」がなくなり、後継ブランド「マッキントッシュ」、「クレストブリッジ」の大苦戦ですが、各報道の論調にはあまりにも三陽商会を叩きすぎて首をかしげたくなるようなものもありました。
例えば、「マッキントッシュ」の不振に言及する報道は多いのですが「クレストブリッジ」の不振に言及したものはあまりありません。しかし、三陽商会の元幹部の方の意見や前後の状況から判断すると、知名度において大きく劣っている「マッキントッシュ」の売れ行きがあまり伸びないことは当初から社内でも予想されていたと考えられます。三陽商会の最大の計算違いは「クレストブリッジ」の不振でしょう。
「クレストブリッジ」はバーバリー社との新しいライセンス契約によるブランドで、三陽商会からすると「これもバーバリー」という認識だったでしょう。しかし、一般消費者にその事実は周知されておらず、一般消費者からすると「クレストブリッジ」と「バーバリー」はまったく別ブランドだったのです。得体のしれない「クレストブリッジ」なんていう新ブランドがジャンジャン売れるはずがありません。三陽商会の計算違いはここだったと思います。
また、三陽商会は契約終了直前まで契約更新を期待していたという報道もありましたが、これも疑問です。元幹部はすでに数年前から契約更新は難しいと感じていたと話していますし、大人服に先駆けて子供服のライセンス契約は打ち切られています。子供服の契約が打ち切られた時点で大人服の契約更新もあり得ないことは普通の知能を持った人ならだれでも予測できたでしょう。三陽商会の経営陣がそこまでアホだったとはとても考えられません。
しかし、バーバリー終了以降の備えに効果的な政策が打ち出せなかったこともまた事実です。ただし、何もしていなかったというのではなく、いろいろとやったが上手くいかなかったというところが実情ではないでしょうか。
「爆買い」終了で百貨店が再び減収に転じ、王者だった伊勢丹新宿本店も減収傾向に転じました。爆買い終了の影響もゼロではありませんし、これまでの伊勢丹の「先端ファッション志向」が消費者にも出店する業界側にも受け入れられなくなりつつあります。
これまでのやり方を変えられない企業やブランドは2017年もどんどんと破綻するでしょう。どのように変化に対応するかが、来年以降の生き残りを左右することになるでしょう。
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