「外はサクサク、中はしっとり、ふわふわ新食感。とろ~り熱々の濃厚ソースで召し上がれ♪」
いかがですか?
美味しそうでしょう?
なに味か分からないけど。
甘いかしょっぱいか、ごはんかおやつか分からないけど。
不思議ですね。
いわゆる〈シズル感〉を使った表現は、
聞き手の五感に訴え、想像をかきたてるのに効果的です。
上手に使おうシズル感
まず、シズル感にまつわる本について。
ホイラーの公式とは、アメリカの経営アドバイザー、エルマー・ホイラー(Elmer Wheeler)が1937年の自著『ホイラーの法則』で表したマーケティング、販売のノウハウのこと。第一条から第五条まである。
・第一条:ステーキを売るな、シズルを売れ
・第二条:手紙を書くな、電報を打て
・第三条:花を添えて言え
・第四条:もしもと聞くな、どちらと聞け
・ 第五条:吠え声に気をつけよ
Wikipediaより
ホイラーさんは、膨大な量のキャッチコピーを検証して、売れる・売れない理由を導きだした人です。
シズル感については、第一条に書かれています。ステーキ肉がどこでどんな育ち方をした生後何ヵ月の牛のどこの部位で云々かんぬんより
「ステーキは目の前でじゅわ~っと、お好みの加減にお焼きします!ふわっと香ばしくジューシーな味わいをお愉しみください」
と伝えた方が、ステーキを注文させるには効果的ということです。
あぁ、おなかすいた。
アパレル販売員が一度は悩む表現力
販売員『こちらは、ゴワ、バサッという感じで、こちらは、シュルン、ストンッという感じです。』
お客様『…。』
販売員『伝わりますかね、シュルン、、』
お客様『シュルン、、』
販売員『シュルン、ストンッです。』
お客様『シュルン、ストン…』
もはや何語?何の話??ってなりますよね。実はこれ、つい先日、とあるヤング系レディスアパレルショップで春物のワイドパンツを見ていたお客様と女性店員の会話です。
販売員さんは、生地の違いによる雰囲気の違いを、擬音語のみで伝えようとしています。
しかしこれでは、お客様に傾聴スキルを求めすぎですね。笑
違いを分かりやすく伝えようとしてるのに全く逆効果です。
では、どうしたらいいのでしょうか。
「で、だから?」の問いに、行けるところまで行け
意外と、接客中に最後まで話しきる(読点→。まで行く)販売員さんは少ないです。言葉が出てこないんですね。
内心笑ってるあなたももしかして…?
とりあえず、こんな調子の彼女が伝えたいことを言葉にしていってみましょう。
出だしはあえて使います。
『こちらは、ゴワ、バサッという感じで』
ここに
だから?
と思いっきり突っ込んでみましょう。
ゴワ、バサッ…から連想できることは
・地厚
・洗いざらし
・かたい感じ、強い感じ
etc…
「洗いざらし」って、なんか清潔そうでプラスイメージなので使います。
『こちらは、ゴワ、バサッという感じで、洗いざらしのような』
ような?!
はい、再び突っ込みます!
洗いざらし、から連想できることは
・さっぱり
・ナチュラル
・気持ちいい
etc…
「ナチュラル」って、なんか環境によさそうなので使いましょう。
『こちらは、ゴワ、バサッという感じで、洗いざらしのような、ナチュラルな風合いで』
だから、なに?!
はい、またもや突っ込みます!
ナチュラルな風合い、から連想できることは
・天然
・やさしい
・媚びてない
etc…
全部良さそうなので使います。
『こちらは、ゴワ、バサッという感じで、洗いざらしのようなナチュラルな風合いです。天然素材の綿やウールとのコーディネートでやさしい雰囲気に着こなせます。媚びてない感じが素敵です。』
はい、それを着こなしたあなたはきっとすべての老若男女に好印象!!
それでは
シュルン、ストンもぜひやってみてください!笑
もし、少しクラスアップしたいなら
『ゴワ、バサッという感じで』には濁音が二つ入るため硬く重い印象を与えます。また、短い擬音が連続することで、幼い印象を与える場合があります。
そこで
『こちらは、しっかりとしたハリがあり、洗いさらしのようなナチュラルな風合いです。』
このように、出来るだけ濁点のつく文字を使わずに話すと耳さわりも軽く上品で、素材も少し軽く感じられるのではないでしょうか。
シズルなワードが入っていなくても聞こえが軽やかだなんて、一歩先行くシズル感。
春ですし、言葉も衣替えしましょ。
お客様に必要なのは、素材の違いよりも着たときの印象の違いです。
その違いを具体的に伝えるのは言葉しかありません。聞こえ方や言葉の印象を上手に使いこなしてお話ししましょう。
それでは、また来週~。