マス層に先端層の嗜好を押し付けても無駄

衣料品を売る場合、マスに販売したいのか、高感度層に販売したいのかを考えなくてはなりません。

販売員のみなさんもそうですし、商品を企画する人もそうです。

先日、ユニクロでアンダーソンコラボのカモメプリントTシャツを買いました。
790円に値下がりしたからです。

色は白です。このTシャツの生地はちょっと厚めです。
色は、薄い紺、薄いグレー、この白の3色です。

例年以上の猛暑が続いていますが、当方は夏が嫌いです。
何が嫌いなのかというと、汗っかきでずっと汗が流れているところです。

汗で濡れているのが目立たない色を夏は選ばねばなりません。
汗で濡れているのが目立たない色は、白、黒、濃紺です。
しかし、黒と濃紺は生地によっては汗が乾いたあとに白く塩が残ります。
これはこれで格好悪いので、黒、濃紺を買うときにはよほど注意しなくてはなりません。

一方、白ですが生地が薄すぎると濡れてスケスケになりますからこちらも生地の厚さに注意が必要です。

薄いグレーや薄い紺は一番危険です。濡れているのが一目でわかります。

ですのでこの白を買いました。

ユニクロが前年秋からコラボしているJWアンダーソンですが、ちょっと洒落たデザインだと思うのですが、売れ残り品が多く、投げ売られることが珍しくありません。

そんな中にあって、このカモメTシャツは、ほとんどが定価で完売状態になりました。
今は一部店舗に10枚ずつくらいが残っている程度です。
それが990円に値下げされ、このたび、790円に値下げされました。

アンダーソンコラボの他の商品に比べて、定価での消化率は高かったですし、790円にはなかなか値下げされませんでした。

ユニクロの場合、値下げされにくいということは、製造原価が高いか、人気が高いか、のどちらかかその両方で、値下げされている物は人気が低いということが一目でわかります。

ところが、このカモメTシャツ、発売当初はファッション業界人、とくにファッショニスタっぽい人たちから評判が悪かったのです。

カモメ柄がどうなんだ?
カモメ柄が印象強すぎるから、ユニバレする

とかそういう声がネット上では多数流れていました。

実際に販売されると、カモメTシャツの方が他のコラボアイテムよりハイペースで定価で売れたのです。

いかに、マス層の嗜好とファッショニスタの嗜好が異なるかがよくわかります。
マス層に売りたいならカモメTシャツで正解なのです。

ファッショニスタはなまじ尖っているので、そんな尖った服装をしたがる人なんて人数的には少数でしかありません。
ですから、ファッショニスタが好きな商品は少数の尖った人にしか売れないのです。

そこを理解しないからファッション業界が提案する商品はマスに売れずにアパレル不況を引き起こしているのです。
値段もさることながら、商品のデザインがマスに受けるかどうか、そこに自分の嗜好を交えずに見極める必要があるのです。

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】