こんにちは、タニグチレイです。
以前に皮革素材の性質を評価する様々な試験について書いたことがあります。
今回の内容はその試験にも少し関連することなので読み返してもらうと少し深まるかと思います。
さて、今回は皮革素材や製品に関係する耐性についてどんなことに気を付けないといけないか取り上げていってみようと思います。
いわゆる「耐○○性」という耐性です。
これは繊維製品でも同じだと思いますがお客様が購入する上で気になることや万が一の対処法などに関係します。
知っておきたいことや知らないと困ることなので販売する際にしっかりとお伝えできないといけません。
購入する前に不安が解消できないと買うに買えませんよね。
今までに書いたことも含まれますので復習と思ってください。
今週と来週に分けて書いていきたいと思います。
耐光性
光による劣化に対する抵抗性。
自然環境の中でも光による変化が比較的大きくて避けては通れません。
特に紫外線による作用は天然繊維をはじめ合成繊維も多少なりとも影響を受けるものなので皮革も同じです。
その影響とは光による分解で黄変したり強さが低下したりします。
光に含まれる紫外線や青色の可視光には漂白や酸化作用があり染料や塗料の退色を引き起こします。
さらに長時間照射すると銀面や仕上げ塗膜が劣化することもあります。
お客様からよく「使っていったら色褪せてきますか?」と尋ねられることがあります。
鞣し方法や染色方法によって違いはありますが継続して使用するほうが退色が目立つことは少ないと思います。
もしも退色が目立つような革質の製品であったとすれば使用によって濃色へと変化する経年変化も目立つものであるはず。
仮に窓から光が差し込む場所にしばらく使用せずに保管していたらその部位だけきっと退色してしまうでしょう。
クローゼットでは考えにくいですがもしかしたら窓際の棚で保管していた場合はあり得ますよね。
ですから対処としては継続的にケアしながら使用したり保管時は暗所にしていただくのが良いでしょう。
ちなみに光に対しては染色堅牢度の試験がされており繊維の試験を適応して行われています。
例えば太陽光に対してはJIS L 0841、ISO 105-B01:1994が該当するようですね。
耐候性
老化に対する抵抗性。
これは上記の光も含め風雨や湿気や温度など自然条件の影響を受けて時間経過に伴って起こる劣化に対する抵抗性のことです。
劣化要因としては紫外線が特に重要なので先程の耐光性に伴う要素になりますね。
対処としてはこちらも同じような方法になるかと思われます。
こちらも繊維に準じた試験が行われており人為的にコントロールできる耐候試験装置が用いられているようです。
耐汗性
汗の作用に対する革の染色堅牢性。
汗には0.3~0.5%の塩化ナトリウムや微量の無機塩そして有機酸や脂肪酸にタンパク質などが含まれているそうです。
有機酸による微生物の繁殖促進などが革の性質劣化の原因になります。
鞄の持ち手や財布の常に手にしている箇所などが本体よりも劣化が早かったり黒ずんできたりする要因のひとつに汗があります。
使うものである以上手にしないわけにはいかないので対処としては定期的に乾拭きしたり汚れを落とすようにするのが良いでしょう。
ちなみに染色堅牢度の試験としてJIS K 6547で規定されています。
耐水性
この項目は気にされる方が多い水に対する抵抗性。
吸水量が少ないことや水が透過しにくくその物性や外観などが変化しにくいことが重要なポイントです。
革製品は通常水に触れたり水を含むことは少ないものです。
ですから日常起こりうるのが雨などによる水濡れによって変化が起こるか起こらないかが気になるところでしょう。
これは一時的だったり部分的だったりという場合もあります。
本来コラーゲンは親水性が高く革も親水性が高いもの。
ただしそのまま乾燥すると線維同士が膠着したり収縮や変形が生じたりします。
これは本来の親水性や鞣しなど製造工程でも親水性の高い薬品を使用ているからです。
塗装した革が水に触れることで膨れができたり変色や硬化など起こりやすい。
革に耐水性を持たせるには加脂剤やフッ素化合物などを仕上げ剤と混合して加工をすると良いでしょう。
例えば3M社のスコッチガードで皮革保護剤加工を施した革などは撥水、撥油の効果があり水濡れに対する心配がなくなります。
と言ってもこれは製造工程での話になるので購入した製品の対処法ではありませんね。
身近なものではCOLUMBUSの保護スプレーAMEDASというものがあります。
これはフッ素系撥水剤でコーティングします。
雨の時期のお出かけには欠かせないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
さて前半はここまでですが皮革製品は使いながら変化するのを楽しんだり手を加えていきながら使用感を楽しんだり味わいがあります。
特性や対処法を知って神経質になり過ぎず使用すれば素材の良さを存分に楽しめます。
知っておくことでそんな提案ができるといいですね。