こんにちは、タニグチレイです。
今回は革の試験についてです。
素材として適切であり問題がないものかどうかは重要なことです。
これは革に限ったことではなくどの素材にも当てはまるでしょう。
皮革素材はその性質を評価するための試験方法や規格値が日本産業規格(JIS)や国際標準化機構(ISO)、国際皮革科学者技術者連合会(IULTCS)によって規定されています。
こちらが先週の記事。
その中で最後に書いた3つの試験方法。
科学分析試験、物理試験、染色堅牢度試験。
今回はそれぞれにどんな項目があるのか見ていきましょう。
なお、下記はNPO法人日本皮革技術協会にまとめられているISOやJISの一覧です。
こちらも見ていただくとどんな項目があり国際規格と国家規格の関連もわかりやすいと思います。
http://jalt-npo.jp/学会の活動/革関係iso一覧/
http://jalt-npo.jp/学会の活動/革関係jis一覧/
NPO法人日本皮革技術協会のHPより。
試験方法や規格値は皮革素材の性質を評価するもの
まずは試験条件というものがあります。
・皮革中の水分量は測定結果(特に物理試験)に大きな影響を及ぼすためJIS K 6550では20℃相対湿度65%で48時間放置、JIS K 6556-2およびISO規格では23℃相対湿度50%で24時間以上放置した後に試験をする
・部位による線維密度や方向が異なり部位差が測定結果に及ぼす影響が大きいため比較的ばらつきの少ない線維構造を持つ部位から試験片を採取するように定められている
・丸革、半裁革、ショルダー、バット、ベリーの各部位についてそれぞれ採取部位が定められている
と、このように状態や部位によって結果に偏りが出ないようにしっかりと決められているんですね。
天然素材だけにこのように指定されていると安心です。
それを踏まえて次はどんな内容について行われているのかひとつずつ見ていきます。
①化学分析試験
革中の水分、全灰分、脂肪分、クロム含有量、皮質分、可溶性成分、pH、遊離ホルムアルデヒド、 6価クロム、溶出金属、フォギング、アゾ染料などを規定する試験がある。
皆さん科学は強いですか?(笑)
馴染みのない言葉ばかりが出てきていきなりよくわからないやつですね。
例えば
革中の水分には水分測定法がJIS K 6550(平成28年3月に改正)に規定されておりその内容は105±2℃で革を加熱乾燥して重量減少の最低値を測定して求めるとされています。
他にも着心地や履き心地に影響する吸着水分量を規定するものもあります。
なおこの規定は国際規格ではISO 4684:2005、IUC 5に該当しているので上記の日本皮革技術協会ISO一覧を見ていただけるといいかと思います。
あと脂肪分は脂肪含有量のことでn-ヘキサンやジクロロメタンで抽出される成分で規定されています。
など、このように多くの項目でそれぞれの規格値に適うように行われているんですね。
ちなみに、JIS K 6550は平成28年3月改正と括弧書きしていますが新たにJIS K 6556,6557,6558の規格群が規定されています。
これも日本皮革技術協会のJIS一覧に革試験方法として細かく分類されているのを見ていただけます。
この改正の目的はISOとの整合性でありそれぞれにISOがほとんど対応しているのも見ていただけると思います。
以前よりさらに適応性が上がったことが想像できますよね。
②物理試験
引張強度、引裂強度、伸び、銀面割れ、耐屈曲性、耐摩耗性、耐水度(静的、動的)、はっ水度、吸水度、吸湿度、可塑性、柔軟性、仕上げ塗膜の剥離強さ、耐寒性試験、耐乾熱性試験、燃焼性試験、液中熱収縮温度などを規定する試験がある。
こちらは物理的の名の通り強度や耐久性など外的要因に対するものだというのがわかっていただけると思います。
この辺りは製品の使用後に発覚していくことになるので販売員の皆さんはアパレル商品から連想できるでしょう。
革ならではのものは銀面割れという靴用甲革やその他薄物革の銀面の強さを測定するものがあります。
今までの記事でも出てきた可塑性は力を加えて生じた変形が戻らない性質を規定しています。
引張強度や仕上げ塗膜の剥離強さなど規格値が定められているのは販売する側も購入する側も安心につながります。
③染色堅牢度試験
染色摩擦堅ろう度試験、汗に対する染色堅ろう度試験、洗濯に対する染色堅ろう度試験、光に対する染色堅ろう度試験(耐光性)、移行に対する染色堅ろう度試験などがある。
皮革の試験法として、最も多く行われている。
ここの当てはまるものはアパレル製品の販売をしている皆さんにも関係することは多いのではないでしょうか?
水や汗による色落ちや光による色褪せに変退色など生地でも当てはまることがありますよね。
日本皮革技術協会のJIS一覧にはありませんがL(繊維)にも含まれるものがあります。
例えば、
光に対する革の染色堅牢度(JIS L 0841)対応IS0(ISO 105-B01)対応IU試験(IUC 401)
汗に対する革の染色堅牢度(JIS L 0848)対応ISO(ISO 11641)対応IU試験(IUC 426)
など8項目ほどあります。
革衣料もあるので納得ですね。
染色した革は摩擦や水、汗などの影響を受けて染料や顔料、鞣剤などの理化学変化が起きます。
それによって起こりうる変退色の程度を5級〜1級を9段階に分けて判定します。
5級が一番変退色が起こりにくく下がるほどに起こりえます。
全項目ではありませんがこのように見てくると国際規格でも国家規格でもしっかりと規定されているのがお分かりいただけたと思います。
店頭での接客ではこういった専門的なことを伝えることはまずありませんが革製品を購入後「使用したら○○になったけど?」なんて時にお伝えできる場合もあります。
調べる時にも何を調べてみたらいいかもわかりますしね。
そういった時にこの記事をぜひ思い出してみてください。