「鞣し」とは革を柔らかくすること。

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こんにちは、タニグチレイです。

皮革を知る上で必ず出てくる「鞣し」ってなんのことでしょう?
よく聞く言葉で「革」と「柔」の漢字を合わせて「なめす」。

なぜ鞣す必要があるのか?
なぜ色々な動物の皮は鞣すことができるのか?

今回はこの「鞣し」について書いていきたいと思います。

 

鞣すことで素材として使用できる柔らかい革にする

一番簡単に言えば原材料である皮を素材として使える革にすること。

もう少し詳しく言うと皮の線維構造を保持したまま様々な鞣剤を用い科学的にコラーゲン線維を安定させ革にすること。
その目的は大きく3つ。
①耐熱性を付与すること。
②化学薬品や微生物に対する抵抗性を付与すること。
③皮の性質に化学的な特性を付与し革らしくすること 。

急によくわからないですね。
というわけで順に補足していきます。

 

コラーゲン線維は科学的に結合(架橋)して安定化させると耐熱性が向上する特性があります。
(架橋とは本来タンパク質などの生体成分が時間経過によって自然に、あるいは酵素反応によって共有結合すること)
そしてこの科学的に架橋するのに鞣剤と呼ばれるものが用いられこれを線維間に充填させることによってコラーゲン線維が安定し固定化されます。

その結果熱収縮温度(耐熱性)を上昇させ熱によってゼラチン化せず耐薬品性を向上させ防腐性を高め乾燥による硬化や変形の少ない革にすることができるのです。

つまり上で挙げたように①熱に強く②(薬品や微生物に強くすることで)腐敗することなく③革の柔らかさが持続する素材になるわけですね。

 

ではもし皮を鞣すことなくそのままにしたらどうなるのか?

コラーゲン線維同士が癒着したままになりガチガチに固まった生皮(なまがわ)になります。
酵素による自己分解や細菌による皮質の劣化が始まり微生物の作用によって皮が悪臭を伴って分解する腐敗も起こる。

皮の状態の時にはすでに生きていないわけですからこれは想像できますよね。
ただ少し話は逸れますが皮の利用は鞣したものだけではありません。

和太鼓などには牛や水牛の生皮(きがわ)と呼ばれるものを使用しているようです。
生皮とは脱毛や石灰漬けののち水洗いや加脂をして乾燥させたものです。
上記に書いてきたような鞣剤を用いる鞣しはしないんですね。
ですから身の回りに馴染みのある靴やカバンなどの皮革製品とはまた製造工程が違い特性が違うわけです。

ちなみに三線にはニシキヘビの皮が使用され三味線は猫や犬の皮が使用され胴の大きさに小動物が向いているそうです。
今は合成紙を貼る三味線や合成皮革を使用した和太鼓もあるようなので流通量や価格など様々な理由で変化しているのでしょう。
良い音に拘ると天然の素材が良いのかもしれませんけど和楽器には触れたことがないのでわかりません。

 

そして重要なのが何度も出てきた鞣剤(じゅうざい)について。

代表的なものは植物に含まれるタンニンを主成分とする鞣剤と毒性のない3価クロムの塩基性硫酸クロムを主成分とする鞣剤です。
前者の鞣剤を使用する鞣し方法を植物タンニン鞣しと言い後者をクロム鞣しと言います。
よく聞くのがこの2種の鞣し方法なので聞いたことある方も多いでしょう。

他にも合成タンニンや魚油、ホルムアルデヒド、アルミニウム、ジルコニウムなど鞣剤の種類はあります。
仕上げたい革の風合いや特性に合わせて単独の使用だけではなく複数の組み合わせをするものもあります。
鞣剤を線維間に浸透させて化学反応を進行させることが重要なんですね。

 

最後に革らしくというところですがこれは柔軟性、ぬめり感など特有の感触、美しい銀面、保温性、吸湿性、放湿性、適度な可塑性、弾性、耐久性などの性質の部分。
鞣剤によってコラーゲンとの結合具合が異なるのでどのように仕上げたいかによってこの性質も少しずつ違うものになるわけですね。

 

伝統的な植物タンニン鞣しと効率的なクロム鞣しと多様に対応したコンビネーション鞣し

ではそれぞれの鞣し方法はどんなものなのかを挙げていきます。

 

植物タンニン鞣し

 

・古くは紀元前から続いている鞣し方法のひとつ。
・当時は植物の樹皮や幹、葉、実などタンニン含有量の多い部分を粉砕してそのまま使用していた。
・今は温水などでタンニンを抽出し液体状のエキスとして使用することで線維間に浸透しやすく収斂性も高まる。
・ピットと呼ばれる槽を使う鞣し方法がありエキスにすることでタンニン濃度を調整することができ時間はかかるがしっかりと鞣すことができる。
・工程時間の短縮のためドラムを使用した速鞣法も開発されている。
・使用するタンニンによって効果も少しずつ異なり、例えば

タラ
カサルビアの実から抽出されるもので鞣した革は銀面のキメが細かく柔軟になる

オークバーク
オークの樹皮や葉、実にタンニンを多く含み鞣された革は耐水性が高くなるため底革に使用されることが多い

ミロバラン
テルミナリアの果実から抽出されるもので鞣された革は柔軟だがやや締まりと硬さに欠ける

などそれぞれに違いがある。

特徴
・タンニンの収斂性により引き締まるため型崩れしにくく丈夫な革になる。
・可塑性による変形やタンニンが茶褐色に変色することによる経年変化が起こる。
・水分の影響で変質しやすいが吸水性が良く染色しやすい。

 

クロム鞣し

 

・現在最も多く使用されている鞣し方法でドラムと呼ばれる回転体を使用して24時間以内で終わらせることができる。
・鞣し時間を大幅に短くして効率的に大量生産ができる。
・クロムはコラーゲン線維の組織が潰れないように架橋結合する。
・軽く伸縮性に優れた革に仕上がるため加工しやすく柔らかで手触りも良い。
・弾性や耐熱性も強いため引っ張りなどに対して耐久性があり熱にも強い。
・正電荷をもつため酸性および直接染料での染色性が良い。
・3価クロムは自然界に存在している元素のひとつであり人体に必要な栄養素でもある。
(毒性が高いのは6価クロムでありこれには鞣し効果がないため使用されていない)
・クロム循環利用というのもあり排液中のクロム化合物を分離回収して鞣しに再利用するか排液を直接鞣しに再利用するもので排水中のクロム化合物の排出削減のためのシステム。

特徴
・しなやかで軽く伸縮性がある。
・弾性と耐熱性があるため傷や変形に強い。
・安価で生産性が高く発色が良いことで色鮮やかな素材にできる。

 

コンビネーション鞣し

 

・二種またはそれ以上の鞣剤の併用で鞣す方法。
(例えばクロム鞣しをした後に植物タンニン鞣しで再鞣する)
・複合鞣しや混合鞣しとも言う。
・単独の鞣剤で得られない多様な特性の付加や欠点を補うことができるため様々な製品に対応できるようになる。
・クロムとタンニンのバランスの調整により質感をコントロールすることも可能。

 

ざっと鞣し方法による違いを挙げましたがどれが優れているかではなくそれぞれの良さがあります。
製品にする上で革の種類だけでなくどんな特性が必要だから鞣しは何が良いか?
製品に使用されている革はなぜこの鞣しのものが選ばれたのか?
そんな視点で見てみるとお客様にお勧めする時の理由をいろいろ考えることができます。

使用による変化の有無やケアなども伝えやすくなりますからね。
本日はここまで。

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谷口玲
About 谷口玲 210 Articles
1976年3月生まれ。 販売員歴18年。 メンズはヨーロッパ系デザイナーズセレクトショップと英国デザイナーズブランド、レザーグッズブランドで販売。 レディースはミセスセレクトショップとドメスティックデザイナーズブランドで販売。 今まで大阪、神戸、京都、広島、札幌、東京、横浜などの百貨店を中心に店頭に立ち現在はフリーランスの販売員。

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