こんにちは、タニグチレイです。
製品革の仕上げは種類がいくつもあります。
以前に書いたシュリンクや型押しも該当します。
そして今回はシューズやウェアなどでもよく使われる起毛加工した革の種類について書いてみたいと思います。
アパレル販売員の方は「起毛」とか「毛羽」というワードからは冬の毛織物を連想することが多いでしょう。
皮革製品の「起毛」や「毛羽」は決して冬特有のものとは限りません。
春に起毛革のバッグやシューズ、サンダルなど上品さと柔らかな印象を与えるアイテムとして取り入れてみる。
明るい色のものを選んだり他の素材とコンビネーションで使用しているのも良さそうです。
まずは起毛革とはどんなものでしょうか?
それは銀面、または内面(床面側)をサンドペーパーなどの研磨材を使って起毛させた革のことをいいます。
いわゆるすべすべした手触りの表面ではなく少しヌメッとした手触りの表面になっているものです。
毛羽立たせてあるので毛並みの向きに撫でるとしっとり、逆さに撫でると抵抗を感じるような感触ですね。
起毛させる理由としては傷などによって状態が良好ではない革を均一に仕上げ見た目や感触を良くすることがまずあります。
どうしても生息時の状態によっては目立つ傷があるものも出てくるでしょう。
それを加工によって使用できる製品革にできれば無駄にすることはありません。
そして製品後に使用する上でもキズが目立ちにくいのでワークブーツや登山靴のようなハードな使用を想定したものにも向きます。
製品によっては上質でエレガントにもなり製品によっては無骨でタフなイメージにもなる。
いくつかある種類を見ていきましょう。
銀面(表面)を起毛したヌバックと内面(床面側)を起毛したスエードとベロア
革は基本銀面+床面と以前に書いたことがありますが起毛革はどちらの面を起毛させているのかで呼び名が違います。
ですからどちらの面を加工しているのか以下に簡単に挙げていきます。
ヌバック
銀面の表面を軽くサンドペーパーで除去して起毛させる(バフィング)ことで短く毛羽立たせて仕上げた起毛革。
スエードやベロアに比べて毛羽が非常に短い。
子牛、鹿、羊などが加工に向いている。スエード
子牛、豚、羊、山羊などの小動物の皮を原料として革の内面側をバフィングして毛羽を揃えた起毛革。
ベロアよりも毛羽が繊細で短く均質。
甲革(靴の甲部の表革)、衣料用革に使用することが多い。ベロア
成牛など大判の革の内面をバフィングで毛羽立たせたソフト調の革。
銀付きのものを銀付きベロアといい床革を用いたものを床ベロアという。
小動物のスエードに対して毛羽がやや長い。
甲革などに使用する。
ちなみに豚ヌバックや成牛ヌバックなどもあるので上記の動物の種類はあくまで向いているというものです。
そして記載の3種では毛羽の長さはヌバックが一番短く次いでスエード、ベロアとなります。
これは見たことある方はなんとなくイメージできるのではないでしょうか。
あと特定の雄の動物の革を起毛させたものがあります。
バックスキン
雄鹿革の銀面を除去してその面を起毛した革。
Buckはトナカイ、カモシカ、欧州産の鹿、山羊などの雄を指す。
これはもともと傷が多い雄鹿の革を均質に仕上げるために加工をすることが多かったようですね。
最近は減ったと言われるエルクも生息時の傷は多いと言われています。
わかりやすいシボにしっかりと感じる弾力感と着色による濃淡が出たなんとも良い味わいのエルク革を見たときはかなり心惹かれたことがありました。
・・・少し話が逸れました。
最後にひとつ。
スエードのシューズは雨の日に向いていると言われているので使用されている方も多いと思います。
その理由はここまで書いてきた通り革の表面を起毛させていることです。
スムースレザーの場合雨は直接革の表面に当たる(届く)がスエードの場合は毛羽があるので雨が直接革の表面に当たらない(届かない)からです。
構造は違いますが毛皮を想像していただくとイメージしやすいかもしれませんね。
何も防水処理していない状態の場合一般的な雨量くらいならその後水気を取り除き陰干しして乾ききった後にブラッシングをすればおそらく大丈夫でしょう。
ただしゲリラ豪雨のような状況ではさすがに万全とは言えません。
まぁ何を履いても同じかもしれませんが・・・。
ワイヤーブラシで毛並みを揃えスエード用の栄養スプレーや撥水スプレーを使用して万全にしておくことをお勧めします。
製品によってメリットも多い起毛革も提案できると幅が広がりますね。