こんにちは、タニグチレイです。
革の仕上げについては着色や起毛加工など今まで書いてきました。
他にもいくつかありますが今回は比較的取り扱ったことがありそうなエナメルのことに触れてみたいと思います。
アパレル販売員の皆さんもエナメルのカバンやシューズなど店頭で販売したことがあるのではないでないでしょうか?
今はしばらく店頭での仕事ができすに自粛の方が多いと思います。
こういう時に知識をひとつ増やしておきましょう。
エナメルは革の表面に光沢を持たせ耐水性や耐摩耗性を強化するために樹脂で塗装したもの
まずは一目見て強い光沢感が特徴的だと多くの方が感じるでしょう。
あれは革の表面をポリウレタンなどの樹脂で塗装したものだからです。
工程としてはまず下地になる革をペーパーロール機にかけて銀面を磨き取り均一な表面に仕上げます。
そして水性塗料で目的の色に塗り上げる下塗りという作業を施す。
製品としては色鮮やかなものやグラデーションにしていたりマーブル模様にしていたりと特徴的なものもありますがそれはこの下塗りで行います。
その後ポリウレタン樹脂塗料を湿布し乾燥させる。
革を塗装膜で覆うことになるのであの独特な光沢の表情になり耐水性に優れたものになるのです。
コーティングをして本来革自体が持つデメリットを解消したものですね。
元来は加熱した亜麻仁油を用いて作られていたそうですが現在ではポリウレタンなどの樹脂で塗装するのが主です。
ちなみに亜麻仁油は血液を固まりにくくしたり代謝を良くすると数年前に話題になったことがあるので知っている方もいるのではないでしょうか。
ボクの周りにも豆腐にかけたり直接飲んでるという方がいました。
原料の亜麻は繊維としても親しみがあるでしょうから知ってみると色々身近にあるものですね。
このエナメル革が代表的であるウレタン仕上げは上記のようなウレタン樹脂塗料を用いた革の仕上げ方法です。
強靭で弾性のある塗装膜を形成し耐摩耗性、耐薬品性にも優れた物理特性の高い仕上げができるのです。
ところでエナメル革のことをパテントレザーと呼ぶのを聞いたことありませんか?
これは19世紀初めにアメリカの製造業者が亜麻仁油で仕上げたものを製品化し特許(パテント)を取得したことからパテントレザーとも呼ばれるそうです。
どうやらそもそもの原型となるものはヨーロッパ諸国であったようですね。
そしてエナメルの製品というと一番思い浮かぶのが男性ならばタキシードや燕尾服に合わせる黒エナメルのパンプス、女性ならばイブニングドレスに合わせるパンプスではないでしょうか?
これはもともとワックスを必要としないエナメルなら舞踏会やパーティなどで女性のドレスの裾を汚してしまうことがないという配慮だったそうです。
舞踏用だったパンプスにぴったりだったわけですね。
表面の汚れやベタつき、ひび割れなどに注意
ただこのエナメルもいいことばかりではありません。
合成後徐々に劣化していき熱や紫外線の影響を受ける黄変という変化が起きます。
これは人の汗や湿度などによっても影響を受けるものです。
例えば指紋などが目立ちやすく付着したまま放置しておくと取れにくくなります。
他にも熱や湿度が高いと表面の樹脂が溶けてベタつくことがある。
温度や湿度が低く乾燥しているとヒビ割れることがある。
もちろんかなり極度の状態ではありますが近年の気象状況はなかなかに油断できません。
ですのでこまめなケアと適切な保管が必要です。
・着用後は乾拭きで汚れを拭き取る
・気になる汚れがあればエナメル用ローションで全体を磨く
・保管は高温多湿と直射日光を避けしばらく使用しない時も時々状態の確認をする
表面を樹脂で覆っているため基本的には復元や補修はできません。
せっかくの美しさですから放置せず定期的にケアすることを忘れないでくださいね。