バングラデシュ生産現場を犠牲にする日本や欧米諸国のアパレル先進国の身勝手さを知ってください。

今だからこそ!何が起こっているのか、生産現場からお伝えしたい!

আস্সালামু আলাইকুম! (アッサラーム・アライクム!)

みなさんこんにちは!バングラデシュよりハルカがお届けします!

今回は、かなりシビアな内容かも知れません。

トプセラ読者の皆さんは、意識高く仕事に臨まれている方が多いと思います。
そんな皆さんだからこそ、良いことは勿論、悪いことからも目を背けないで欲しい。

昨今の新型肺炎が与える影響、販売等の「消費現場」での現状はよくご存知かと思います。
そこで今回は、「生産現場」で実際に起こっていることを中心にお伝えします。

本日(4/13)、ロックダウン20日目。
バングラデシュの現地から、リアル情報をお届けです。

オーダーがキャンセルされる、という意味

先日、BGMEA(バングラデシュ縫製協会=Bangladesh Garment Manufacturers and Exporters Association)から、とんでもないニュースが発表されました。

それは、欧米諸国や日本のブランド側が、縫製工場に対して、次々とオーダーをキャンセルしている、という内容です。

そもそもBGMEAとは、バングラデシュの縫製業界を全国的にリードしている団体です。
縫製工場や品質管理会社のスタッフなど、関わる全ての人達をサポートする立場にあります。

オーダーがキャンセルされるということは、単純に考えて、縫製工場の仕事がなくなるということです。
また、商品を生産出来ないということは、工場の売上が立たず、究極的には全スタッフが路頭に迷うことを意味します。

そんな事態を受け、BGMEAはブランド側に対して「どうかオーダーをキャンセルしないで欲しい」とメッセージを発しています。

例えば、縫製はすでに完了しているが出荷輸出できず、工場内に保管されている商品がある。
それらは、後ほどブランド側に買い取って欲しいとしています。
また、ロックダウンの影響で縫製作業のスタートが出来ず、工場に生地のままの状態で保管されているものがある。
それらについては、工場が再スタートした後に縫製し、商品として完成するまで出荷を待って欲しいとしています。

この難局を、オーダーキャンセルという方法でブランド側が一方的に救われるのではなく、普段からの協力体制をもって、生産側と共に乗り越えようと。

関わる全ての人達を守るため、そう必死に訴えかけているのです。

一方で、ブランド側の立場は?

ではなぜ、ブランド側はオーダーをキャンセルしてしまうのか。
その答えは単純明快、売上が見込めないからと考えられます。
消費現場にいらっしゃる皆さんの方が詳しいと思うので詳細は省きますが、ブランド側も昨今の影響を受け、直視したくない数値が帳簿に並んでいることは明らかでしょう。

オーダーをキャンセルすることで、その分の運営コストが削減できます。
商品の輸出システムについて少し言及すると、商品が完成し輸出の準備が整った段階で初めて、生産側は代金を受け取ることが出来ます。中には例外もありますが、基本的には、生産側がオーダー通りに生産を完了した時点で、料金が発生するのです。キャンセルした分は支払いをしなくても良い、ということです。

このシステム自体に、ブランド側と生産側の力関係が表れており、どうしても生産側の立場が弱く、コスト負担も増えるということになってしまいます。
また、キャンセルされた商品の末路は、究極的には行き場がなく、過剰在庫として工場内に保管されることになる場合が多いです。

一方で、売れると見込んでオーダーしたものの、その希望的観測が絶望的になっているいま、ブランド側としても苦渋の選択をせざるを得ない状況は、理解は出来ますよね。

バングラデシュにおける、縫製業界の立ち位置

あまり知られていない事実ではありますが、実はバングラデシュ、世界の工場中国に引き続き、アパレル生産量が世界2位という実績をもっています。
国内で見ても、総人口1億6千万人の内、約半数以上が何かしらの形で関わっている、超巨大産業です。

また、国全体としても、2019年の輸出品のうち88%をアパレル商品が占めています。
この産業が衰退したら、国自体が落ち込んでしまうでしょう。

多くの国民が従事しているアパレル生産業。
このままの状態が続けば多くの縫製工場は破綻し、多くの国民が職を失い路頭に迷うという、地獄絵図が待っています。
また、数ヶ月や数年後に消費現場が元の姿に戻ったとしても、生産側の受け入れ体制が整っていないことで、出荷される数量がかなり限定的になってしまうことも予想できます。

この先どうなるの?

ちょっと末恐ろしい話をしてしまいましたが、何も対策が取られなければ現実と化してしまうのです。
これからどうなるのか、何が正解なのか、誰も分かりません。

ただ一つだけ言えることは、犠牲にされて良いヒトやモノなんてない、ということです。

全ての人が平等に救われる方法なんて、無いのかもしれません。
ただ、立場の優位性を利用して相手を蔑んだり、無謀な要求をすることは絶対に許されないことです。

今だからこそ!現地で…

バングラデシュ、絶賛ロックダウン中です。空港は封鎖され、ダッカ市内エリア間の移動も制限され、自宅軟禁状態です。
こんな生活をずっと続ける日が来るなんて、全く考えてもみませんでした。

ただ、こんな時だからこそ、現地で見聞きできる情報や感じ取れる雰囲気を、少しでもお伝え出来ればと思っています。

PS
先日、繊研新聞さんに電話取材頂いた記事が本日掲載されていますので、ご報告です!

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飯塚はる香
About 飯塚はる香 29 Articles
“ファッションを通して世界をよりステキに”が、モットー。2013年〜日本で就職。某アパレルブランドのマネージャーとして神戸や吉祥寺などで勤務。2016年〜カンボジアへ移住。アパレル大量消費国の店頭から大量生産国の工場へと拠点を移す。2019年〜バングラデシュ在住。アパレル生産国で品質管理の仕事をしている。「国際協力×アパレル」の道で、生きていく。