こんにちは、タニグチレイです。
今まで牛や豚など代表的な皮革の種類は以前に書いてきました。
これまでにどこかで手にしたり扱ったこともある身近な皮革素材かと思います。
そういった代表的なもの以外にも皮革素材はたくさんあります。
ワニやトカゲなどの爬虫類やダチョウなどの鳥類。
そして実は日本古来から使用されている魚類もあります。
今日はそんな魚類の中で皮にまつわる話を書いてみたいと思います。
魚皮は日本でも1000年以上前から使われていた
魚皮を鞣して生活の中に取れいれていたものは歴史の中に登場します。
近世以前のアイヌ民族は狩猟、漁猟、農耕や交易などをしていたとされています。
そして漁猟では鮭を主食としており燻製にして保存食としたり交易品として生活の中で欠かせないものであった。
当然皮も活用されており鮭や鱒などの皮を鞣し衣服や靴を作っていたようで博物館などに保存されています。
もちろん魚だけではありませんので鹿やウサギなど毛を取り除いて鞣したものも毛皮のものも様々です。
寒い雪国ですから暖を取れるものが必要でしょうしそこに生息する動物の毛皮は生き抜く上で必須だったのでしょう。
そもそも皮革は食肉の副産物であるわけですから知ってみると納得ですよね。
天然資源の利用と廃棄物を減らす循環型経済に当てはまります。
他にも東大寺大仏殿で明治時代に出土した2振の刀剣の柄には鮫皮が巻かれた跡があったそうです。
この刀は聖武天皇亡き後光明皇后が遺品として東大寺大仏に献納して正倉院に納めたとされ正倉院宝物目録にも記載されていたものです。
ですが、この刀剣は759年に持ち出されて以降行方不明になっていた。
どうやら光明皇后が亡くなる直前に大仏の足元に埋納したと推察されていますが実に1000年以上前にも鮫皮は使われていたんですね。
その後も鮫皮は南北朝時代の「牡丹造梅花皮鮫鞘腰刀拵」という国の重要文化財でも知ることができます。
ん?なんて読むの?と思いますよね。
「ぼたんづくりかいらぎさめさやこしがたなこしらえ」
です。
これは腰刀の鞘を鮫皮で包み磨き上げ仕上げられたものです。
ここで出てくる「梅花皮」とは鞘を鮫皮で包み表面を磨き着色後に漆で仕上げた表情が梅の木の皮に似た模様とのことでこの名が付けられました。
なんとも風情があります。
徳川幕府でも刀剣作りの柄巻皮には鮫皮を指定したとのことで刀を持ったことなくても握った感触は想像できますね。
サメとエイはもともと起源を同じくする生物
先ほど鮫皮というワードが出てきましたがここで使用されているのはエイの皮です。
あれ?鮫ってサメじゃないの?
実はここで出てきた鮫皮はエイの皮なんです。
そもそもサメとエイは生物の分類ではともに脊椎動物門、軟骨魚綱、板鰓亜綱に属します。
またまた難しい言葉が出てきましたね(苦笑)
その下位でサメ亜区とエイ亜区とに別れるわけですが・・・じゃあ区別はどうすればいいのか。
板鰓亜綱(ばんさいあこう)とは軟骨の骨格を持ち5〜7対の鰓裂(さいれつ)を持つ生物です。
この鰓裂というのはいわゆるエラのことでこのエラが側面にあるものがサメで下面にあるものがエイです。
そう言われたらサメとエイの画が浮かびませんか?
エイは中生代ジュラ紀にサメの一部から進化したので分類が同じというのも納得です。
かなり壮大な話になっていってますが区別がつかないから鮫皮がエイという話ではありません。
天明5年(1785年)「鮫皮精義」という書に古来より刀剣の鞘の飾りとする証拠として漢文が記載されています。
そしてアカエイらしき皮図もその書には掲載されており古来刀剣の柄や鞘に使用されていた鮫皮はエイの皮だということがわかります。
ですから生物の起源としてはサメでも素材として使用された「鮫皮」はエイを指していたんですね。
なんだかややこしいですね。
あれ?じゃあサメ革は?
シャーク革もありますよね?
これは先ほどのサメとエイの起源は同じ所に戻りますがサメの皮も背側は楯鱗と呼ばれる特殊な鱗に覆われています。
後世日本近海で獲れたサメも身はすり身にひれはフカヒレに皮は皮革製品にと活用されます。
類似したもので「鮫」の字の原義が失われ今でいう「サメ」に用いられたであろうと言われています。
ですから皮革製品でサメ革もエイ革もあります。
今回は原皮の皮にまつわる話でした。
サメ革もエイ革も特徴が多いものなのでまたそれぞれ別の機会に取り上げてみたいと思います。