食の未来に繋がる培養肉は皮革の未来にも関連する

こんにちは、タニグチレイです。

「培養肉」
この言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?
動物の細胞を組織培養することで、食肉を作る。

つい先日もこのようなニュースが出ていました。

https://gigazine.net/news/20210628-worlds-first-industrial-cultured-meat-production-facility/

培養肉自体は古くより登場を予見されていたようです。
ウィンストン・チャーチル(第61代、63代英国首相)は1931年発刊のエッセイ「フィフティ・イヤーズ・ヘンス」の中で、
「人類は鶏肉や手羽肉を食べるために鶏を丸ごと育てることなんてバカなことはやめて、それぞれの部位に相応しい培地で別々に培養するようになるだろう」
「そうしてできた新たな食品は、当初から天然物を見分けがつかないだろう。そして全ての変化は、気が付かないほどゆっくりと進行するだろう」
と、こう述べています。

そして時が過ぎ、2013年にはロンドンで世界初の培養肉ハンバーガーの試食会が行われています。
評価としては「食感は普通のハンバーガーを食べているようだ」と良好だったそうです。
この時はまだ培養肉バーガー一個の値段は研究費込みの値段でおよそ3500万だったそうですが、今回のイスラエルの施設開設により産業用の培養肉が市販されるようになればチャーチル氏の言うような世の中になるのでしょうね。
記事の中には2022年の販売を目指すとあります。

先んじて、今は植物性原料の代替肉はアメリカのスーパーで販売されており、さらに人工肉製造をしている「Beyond Meat」がマクドナルドやケンタッキーとグローバル供給をする契約を結んだことが報じられています。

https://gigazine.net/news/20210303-beyond-meat-global-supply/

天然肉、培養肉、代替肉の中からレストランによっては提供する種類が違い、スーパーではどれを選んで買うのか選択する未来が近くまで来ているのでしょう。

今回の導入は皮革に関してではありませんが、食肉の副産物である皮革にとって無関係の話ではありません。
過去に取り上げた培養レザー「ゾア」を開発したモダンメドウのアンドラス・フォーガッシュは「レザーは初期培養業界の出発点と言うべき製品」と述べています。
さらには、マイコワークスによる菌糸体を使用した、皮革の代替素材となる新素材についても紹介してきました。

世界の人口は2050年までに90〜100億に達すると言われています。
その大半が今のヨーロッパやアメリカ人のような食生活ができるほど豊かになった場合、畜産だけでは肉の需要に追いつかないと言われています。

合わせて、環境への負荷や衛生面、動物に対する倫理観などの面からも畜産が疑問視されているのは承知の上で、全てが科学によって変われば良いとは思っていません。

素材としての皮革を取り巻く環境と同様、新しい材料(ここでの培養肉)の開発が未来を創るのだと理解できます。
科学や新しい素材、材料などが解決策のひとつとなっていくのだと知ることができます。

人それぞれの主義主張も関係してくることでしょうから、白黒はっきりとした是非や正義ではなく、選択肢の拡大としてまずは知っていきたいと思います。
今回は直接的な「皮革」の内容ではありませんが、関係の深い変革にも少しずつ興味を持ってもらうために取り上げました。

そしてこういったフードテックは海外ばかりではなく、日本でも馴染み深いメーカーがチャレンジしています。

https://www.nissin.com/jp/sustainability/feature/cultured-meat/

2019年には世界で初めてサイコロステーキ状の大型立体筋組織の作成に成功したとあり、培養ステーキ肉は国内から誕生する日も近いかもしれませんね。

これからの培養レザーや代替レザーだけでなく、培養肉や代替肉の情報もチェックしていってみましょう。

それでは、また来月。

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谷口玲
About 谷口玲 221 Articles
1976年3月生まれ。 販売員歴18年。 メンズはヨーロッパ系デザイナーズセレクトショップと英国デザイナーズブランド、レザーグッズブランドで販売。 レディースはミセスセレクトショップとドメスティックデザイナーズブランドで販売。 今まで大阪、神戸、京都、広島、札幌、東京、横浜などの百貨店を中心に店頭に立ち現在はフリーランスの販売員。