原材料や染料の動きも実は店頭に影響を及ぼす

衣料品においては「日本製ヲ~」というジャンルがあるのですが、実際のところ、国内の製造加工場が存続していても、作業ができなくなる可能性があるのです。例えばこのニュース

「染色業界 繊産連総会で染料入手難に関する意見表明」

https://senken.co.jp/posts/staining-industry-190117

 

具体的には、ポリエステル綿混織物の染色加工に使われる青のスレン染料が、中国で一手に生産を行なっていたメーカーの生産中止によって入手できなくなっているというもの。

スレン染料は、耐光堅牢度などに優れており、ユニフォーム用のポリエステル綿混織物の染色加工などに使われることが多い。このスレン染料の中で耐塩素性に優れる青の供給が途絶え、国内染色加工場では在庫をやりくりして生産を続けているが、5月末あたりで在庫が底を突く見通しとなり、この染料での染色加工はできなくなると訴えた。

とのことです。

青のスレン染料が入手できなくなっていて5月で在庫も失くなってしまうということですが、どうしてそんなことになるのかというと、中国の環境規制によって中国で生産されなくなっているからなのです。

そして、この染料は記事中にあるように、中国しか生産しておらず、我が国では作られなくなったからです。

同様のことは以前にもあったようで、生地製造染色に詳しい人によると

数年前は反応染料の紺がなくなるという事態が起きていた。染料はもうほとんど国内では作られていないから

ということで、例えば、染色加工の場合、加工場がいくら国内に残っていても、肝心の染料製作が海外任せになっており、今回のような事態になると、どうしようもなくなることがあります。

繊維の場合、原料も圧倒的に海外からの輸入が多く、綿、ウールはその代表といえます。

 

パソコンやスマホが米国企業や中国企業に圧倒されていても、その内部の部品は日本製が圧倒的に多いこととはちょっと対照的と言わねばなりません。

このトプセラは販売員のためのサイトですが、こういう染色業界のニュースを知っておいても損はないでしょう。今、店頭に並んでいる商品はもしかすると、来年は入荷しない可能性があります。

以前にも、羽毛とウールの高騰で2019年秋冬からダウンジャケットやウールセーターが値上がりするかもしれないというネタをここで書いたことがありましたが、原材料や染料と店頭販売員はかなり断絶した位置にありますが、実はつながっていて、こういうときにそれがモロに店頭に反映される可能性があるのです。

ちょっと馴染みのない業界かもしれませんが、原材料や染料の動きにも時々目を向けてみるのもトップセラーになるためには必要なのではないでしょうか。

 

 

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】