革とサステナビリティ

こんにちは、水曜日のタニグチレイです。先日50代半ばくらいの男性を接客した時の話です。

「革のショルダーバッグ何かいいのないか見ているところ」

声をかけてみるとそう仰られました。ご来店時はくるぶし丈のワンウォッシュのジーンズをひと折りロールアップして足元はトリッカーズ。

「普段トリッカーズはよく履くんですか?」

どんなバッグがいいか聞く前に少し気になったのでこう聞いてみると

「いや、オールデンの方が履くかな」
「あ、そうなんですね」

(ここではオールデンの話は深掘りせず。いや、いいんですけどなんとなく沼にハマりそうな気がして笑)

ここで四角い形をしたショルダーではなく少し丸みを帯びた形をしたショルダーが良さそうかなと頭の中で想像を膨らませながら、

「普段よくお召しになるものはありますか?」

「バブアーのビデイルは気に入っててちょっと味出てきた」

「でしたらタンニン(鞣し)で染料仕上げのものが良さそうですよね?」

と話しながら形は小ぶりなメッセンジャーバッグをイメージ。

「こういうの(メッセンジャーバッグ)いかがですか?」

「あ、この感じいいね」

その後、提案した理由や色の話やエイジングやお手入れ方法などの話をして(お客様も革のことをご存知だったので確認くらい)

「うん、気に入った。これにする」

そう言っていただきお買い上げいただきました。

 

と、端折りながらちょっといつもと違う始まりをしてみましたが、皆さんのお店で扱う商品の中でレザーグッズはどれくらいありますか?靴?カバン?財布?それともリアルレザーは1つもない?

 

正直扱うこともあまりなくて素材や加工などよくわからないという方もいらっしゃるでしょう。ですが上記のパターンとは逆で愛着のある靴やバッグの聞き出しからウェアの提案という接客をするチャンスがあるかもしれない。(靴好きの男性は革のこだわりも結構ありますからね笑)

 

そんなわけでこれから「皮革」に関する記事も書いてきたいと思います。
(少しでも興味を持ってもらえるように頑張ります)

 

皮と革に関するサステナビリティとエシカルの考えはどんなものがあるのか?

今日は初回なので皆さんも目にしたことがありそうな事柄に触れてみたいと思います。

 

 

透ける革や水を節約したなめし 革新的でサステイナブルな革エコーレザーが上陸

最初のこのWWDの記事ではエコーというオランダのレザーメーカーが鞣し工程でほとんど水を使わない「ドライタン」を開発したという内容です。(9月に「Maison MIHARA YASUHIRO for ECCO EXOSTRIKE」でコラボをしていたのでエコーという名前を聞いたことある方もいるでしょう)

皮から革にするための工程を「鞣す(なめす)」と言います。(ここには複数の工程がありますので詳しくはまた別の機会にします)

その鞣す際に重要な「洗い」や「染め」に大量の水を必要とします。

日本国内でも兵庫県姫路市やたつの市は一大産地として有名なので耳にしたこともあるでしょう。ここで製造される「姫路靼」と呼ばれる伝統的な革(別名:白なめし革)は市川という川で行う「川漬け」という工程がひとつ重要なこととされています。
この工程は表皮を適度に腐敗させ毛とともに除去することを目的としているようです。

他にもヨーロッパと日本では水質が違うことからハリ感や発色の違いがあると言われています。

このようにざっくりとですが鞣す工程で非常に重要とされる水をほとんど使わないことで年間約9000人が必要とする水を節水できるとあります。こういった取り組みは地球環境負荷軽減につながると考えられます。

 

 

https://forbesjapan.com/articles/detail/30334

次のForbesの記事で取り上げられているのはイントレチャートで有名なラグジュアリーブランド、ボッテガ・ヴェネタ。

ブランドとしてのエコや自然エネルギーの活用や循環型のシステムなど環境に配慮した取り組みが紹介されています。
そして最初のエコーと少し違うのはアトリエでの職人が働く環境や職人学校のような人を育てていくことも語られている。

伝統を守り技術を伝えていく。環境破壊をせずに持続可能であること(sustainable)と考えたらこの取り組みは当てはまるように感じますね。

 

 

https://www.fashionsnap.com/article/inovation-leather/

最後に少し前になりますがFASHIONSNAPの記事では全く新しいレザーを開発している3社が紹介されています。

その中のバイオテクノロジー企業ボルト・スレッズ社が開発したのはキノコから作られたレザーのような素材。
なかなか驚きですよね。

さらには数日で生産可能とあるので色々な素材を考えてみてもなかなか他にはないでしょう。

読み進めるとステラ・マッカートニーとパートナーシップを組んでるとあります。
なるほど納得の提携ですね。

 

ベジタリアンレザー

ちなみにこちらはステラ・マッカートニーのベジタリアンレザーのページ。サステナビリティの道のりにも2017年に提携のことは載ってますね。

 

 

さて、今回は目にすることの多いワード「サステナビリティ」や「エシカル」は皮革産業(製品)の中でどのように取り組まれているのか一例を挙げてみました。

それぞれに違いますが向かっていきたい方向性としては同じですよね。

そしてアパレル同様これから変化していくはずです。

 

バッグなどを買ってよく「革を育てる(主にタンニン鞣しの革)」という表現が使われるのはなかなか他の素材ではないもの。
使い続けたいと思える素材や商品と捉えると革そのものに興味が出てきませんか?

 

アパレル販売員も覚えておいて損はない皮革のことをこれから少しずつ覚えていきましょう。

 

 

興味を持たれた方はぜひこのTopseller.styleでお付き合いください。
では、また来週。

 

 

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販売員の皆さんが朝聞いてお仕事が楽しくなるように。

DJスイヨウビがお届けしますので楽しみにしていてください〜。

 

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谷口玲
About 谷口玲 221 Articles
1976年3月生まれ。 販売員歴18年。 メンズはヨーロッパ系デザイナーズセレクトショップと英国デザイナーズブランド、レザーグッズブランドで販売。 レディースはミセスセレクトショップとドメスティックデザイナーズブランドで販売。 今まで大阪、神戸、京都、広島、札幌、東京、横浜などの百貨店を中心に店頭に立ち現在はフリーランスの販売員。