こんにちは、タニグチレイです。
これまで革の仕上げについては起毛加工やエナメルのことを書きました。
それぞれアパレル製品で触れたり取り扱ったことがあるものかと思います。
こういった革の仕上げにはまだ他にも色々とあります。
なぜならそれは使用する用途や目的に合わせて革本来の良さを最大にするために行われるからです。
通常いくつか組み合わせて行われることが多いのです。
そこで今回は他にもどんなものがあるかいくつか書いていきたいと思います。
仕上げは革の外観を変化させたり耐性や機能性の向上など目的に合わせて行われる
先にも書いたように仕上げをすることで表面の表情は目的に合わせたものに変化します。
耐久性や耐摩耗性を向上させて素材の良さを引き上げる。
特殊な表情に仕上げることで素材の価値を上げる。
そうすることで革そのものの魅力や特徴を際立たせることができるのです。
ただもちろんメリットばかりではなく革である以上デメリットになることもありますがそれはどんなものでも同じですよね。
例えば素上げというものがあります。
これは仕上げ工程で塗料の塗布や特別な加工を施さず革特有のままにする。
いわゆる植物タンニン鞣しのヌメ革と呼ばれるものが近いです。
製品革としてのヌメ革は少し仕上げはされてるとはいえ素肌と例えれそうな外観と特徴があります。
使うほどに色の変化や水濡れによる変化が起こり擦り傷なども目立つでしょうがそれが味として人気。
じっくり使うことで自分なりの良さを感じたい方からすればそこに価値があるわけですから仕上げは革の弱点を克服することこそ最良というわけではないのが伺えますね。
そしてここからは代表的な仕上げの種類でまずは耐性の向上が目的のものです。
ウレタン仕上げ
ウレタン樹脂塗料を用いた革の仕上げ方法。
強靭で弾性のある塗装膜を形成し耐摩耗性、耐薬品性に優れた物理特性の高い仕上げができる。
自動車用革など強い物理特性が要求されるものに向いています。
以前に書いた高光沢仕上げを施したエナメル革はこの仕上げの一種。
次は独特な外観に変化させて価値を上げることが目的の仕上げ。
アドバンテック仕上げ
淡色に仕上げた革の上にベールと呼ばれる濃色の仕上げ液を塗布しその後部分的にこすり取って革に濃淡を付ける仕上げ。
簡単に言えば淡色に塗布した上に濃色を重ね研磨することで下の淡色が現れるので濃淡のある表情になります。
通常は銀面を研磨しガラス張り仕上げをした革に濃く硬い硝化綿カラー液をスプレーしフェルトバフによってこすり取る。
ガラス張り革の色より濃い色に着色されたベール液を用いることによってツートーンカラーになりフェルトバフの掛け方の強弱で下色とベールの色の割合を調整します。
靴や財布などで使われているのを見たことがあるかもしれませんね。
ガラス張りは以下で書きます。
アンティーク仕上げ
革に年代を経た印象を持たせる仕上げ。
まず型押しやもみを施した革表面に凹凸を付けてから塗装で色調の濃淡を出したり刷毛などで不規則な塗装仕上げを行う。
アドバンテックと違うのはこの表面の不規則な凹凸感を利用して染色ムラを出すことでこちらはドラム染色をします。
艶消し仕上げや低光沢のワックス仕上げなどもここに含まれます。
靴などに使われています。
こがし仕上げ
未塗装の植物タンニン革(ヌメ革)の表面を摩擦熱によってこがし色の濃淡模様を付ける仕上げ。
植物タンニンで再鞣したクロム革の仕上げにも行われます。
こちらも靴などに使われています。
先ほど上記で出てきたもので組み合わせて仕上げされていましたね。
ガラス張り
革の乾燥方法の一つ。
染色、加脂後の革の銀面を平滑なホーロー板や金属板にデンプンなどを接着剤として貼り付けよく伸ばした状態で乾燥させます。
初めガラス板に革を貼り付けて行なっていたことでガラス張り乾燥と呼ばれているそうです。
この方法は糊で革が固定されているので乾燥による収縮が少なく面積の歩留まりが良いのが特徴。
通常はこの後銀面を軽く取り除き顔料仕上げを行うので外観が均一で裁断歩留まりの良好な革が得られると言われています。
一般に銀面模様が粗雑でキズが多い成牛革に用いられ天然の風合いは比較的感じられないものになります。
靴やランドセル、カバンなど幅広く使われています。
次も外観の変化ですが艶や光沢を出して価値を上げている仕上げ。
グレージング仕上げ
革の銀面を滑らかにして光沢を出すためにめのう又はガラス製のローラーで強い圧力を加えながら摩擦する加工。
通常銀面にガゼインなどのタンパク質系仕上げ剤、ワックスなどを塗布してから行います。
下塗り後の革にシーズニング、上塗り、乾燥などを施して数回行うのが一般的。
シーズニングとは下塗りと上塗りの間の中間塗装のこと。
ここで膜を作ることによって次の上塗りの塗料の吸収量を調整することが目的です。
仕上がりはエナメル革のような強い艶ではなく抑えられた上品な艶になります。
アイロン仕上げ(プレート仕上げ)
革表面に加熱した平滑な金属面を押し当てて滑らかさと艶を与え塗装膜を固定する加工。
温度、時間、圧力によってその効果が異なりグレージングよりも強めの艶が出ます。
今回はざっと何種類か挙げてみましたがまだ他にもあり目的に合わせて単独でも組み合わせでもあり得ます。
そう考えると辿れば原皮は同じでも製品革として出来上がるまでに目的に合わせて様々な方法がある仕上げ。
商品に使われている革がどんな仕上げをされたものかわかれば特徴がわかります。
お客様にお伝えするときの理由となる部分。
知ってみると納得ですね。