夏場の皮革製品は紫外線と汗にご用心

こんにちは、タニグチレイです。

非常に暑い日が続いていますが皆さま体調は崩されていませんか?

外を歩いていると照りつける夏の日差しが容赦なく肌を刺すような感覚を覚えます。
暑さと共に日焼け対策も抜かりなくされている方も多いことでしょう。

この日焼けの原因となる紫外線は人の皮膚に影響するだけあって皮革にも影響があります。
真皮層のタンパク質を変性させてしまうんですよね。

UVと略されるUltravioletは英語表記するとなんだかイメージ的には勝手に麗しいものを想像してしまいますが。
(紫好きだからでしょうか)
しかし実際にはなかなかに厄介ですよね。

 

動物の皮革にも変退色の原因のひとつになるもの。

そしてどうしても汗をかくことが多くなる季節でありそれも原因となるひとつ。

そんな時こそこまめなケアをしながら使用すると良いのですがまずどんなことが影響するのか知っておきましょう。

 

紫外線や汗による変化も理解しつつ定期的にケアをしながら変化を楽しめると皮革の良さが出る

皮革製品は色の変退色ということが起きます。
以前に染色のことを書いた時に少し触れましたがどうしても避けられないことであり良し悪しどちらもあり得るかと思います。

染料や顔料などの色素の分解や移動による変色や退色が起こる。
鞣剤や助剤などの劣化による黄変などの変色なども組み合わさって起こります。

その原因は紫外線や酸性・アルカリ性物質によって色素や仕上げ塗膜が科学的に分解されたり変化することがひとつ。
そして汗や水に濡れた状態で摩擦されると色素の移動が起こることがひとつ。

どちらかだけというより使用していればこういったことが複合的に起こっているかと思います。

一般的には日本では7月8月に紫外線量が最も多く気象庁で観測されているそうです。
そして年中なにかと汗はかいているでしょうがやはり気温の高い夏は汗の量は多いでしょう。

ですからこの時期は皮革製品にとっては注意が必要になります。
もう8月も後半ですが・・・。

 

店頭に置いている皮革製品が色やけしてる場合も当てはまります。

この場合は蛍光灯の光によるものですがそれによって仕上げ塗膜や染色革が黄変や色抜けを起こして変色してしまっているんですね。
通常に使用しているものに関しては何時間も何日も直射日光や蛍光灯に晒していることはないでしょうから少し外出したからといって同じようになるものではありません。

この黄変というのも上記と同じようなことが原因となります。

熱や紫外線などによって鞣剤や加脂剤が変質する。
黄色や茶褐色の植物タンニン鞣し剤は紫外線によって淡色化します。
魚油などの加脂剤で加脂した植物タンニン鞣し革では不飽和脂肪酸の酸化により濃色化するなど加工によって少し違いはあるようです。

他にも皮革製品に付着した汗や人の皮脂の分解によって生じる酸や酵素などが作用して黄色く変色することもあります。
ただこれも熱や紫外線などと複合的に合わさり起こることも多いでしょう。

 

皮革製品の中でも人気のあるアニリン仕上げの発色の良い日本製のコードバンはお好きな方も多いです。
使用するほどに徐々に深まる艶がさらに味わい深く良さが増していきます。
しかし扱うお店ではどうしても蛍光灯の下にあるため数ヶ月もすると色やけが起きてしまいます。

だいたい見に来られる方はそういったこともご存知だったりするので在庫品で使用前の色味を確認されます。

他にも同じアニリン仕上げのコードバンでも型押しの加工をしているものと比較すると濃色になっています。
これは同じ色染めでも熱を加えて型押しを施すので比べてみると濃さが違います。

加工の目的があるからこそしているものでも発色にこだわる方には好みの色合いを提案するというのもいいかもしれませんね。

 

種類が多くクロム革の染色に多く使われる酸性染料。
酸の添加がなくても良く染まるが染色温度の上限は50℃と低くタンパク質との結合力がやや低く染色堅牢度もやや低い。

植物タンニン鞣し革に染まりやすい合成染料である塩基性染料。
色が鮮明で光沢が出るが日光や摩擦に対する堅牢度がやや低い。

動植物体から色素を摂る天然染料。
形容し難い独特な色合いや経年変化による色調の変化が存在感があり非常に良いですね。
前回少し取り上げた八幡黒や菖蒲革も天然染料によるもの。
昆虫や貝などから採る動物染料もありますが多くはこのような草木や花から採る植物染料です。
一般的には合成染料で染色したものよりも染色堅牢度は低く日光や水、酸やアルカリに弱いとされています。
紫外線や汗なども当てはまりますね。

 

このように見てくるとデメリットでしかないように思われてしまうかもしれませんが使用するほどに変化していくことは素材としての良さでもあります。
深みの増す表情や風合いは使用するほどに変化してこそ。

夏場は紫外線や汗など油断できない条件が目立つことは確かなのでて定期的にブラッシングや乾拭きをして清潔に保ち使用しない日を作ることで部屋の中で陰干しをしてあげましょう。

適切に使用すれば大丈夫です。

夏の日差しと暑さに負けず乗り切りましょう。

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谷口玲
About 谷口玲 221 Articles
1976年3月生まれ。 販売員歴18年。 メンズはヨーロッパ系デザイナーズセレクトショップと英国デザイナーズブランド、レザーグッズブランドで販売。 レディースはミセスセレクトショップとドメスティックデザイナーズブランドで販売。 今まで大阪、神戸、京都、広島、札幌、東京、横浜などの百貨店を中心に店頭に立ち現在はフリーランスの販売員。