こんにちは、タニグチレイです。
今まで革の種類や鞣し、加工など書いてきました。
財布や鞄、靴など何かしら革製品を使用したことがある方は多いと思います。
素材特有の変化や質感など様々です。
自分のものはよくわかっていたり、お手入れをしてどうなっていくのか知ることができます。
ですが、お店で未使用の製品を見るとはあっても、人が使用したものをじっくり見ることは少ないでしょう。
そこで、今回はボク個人がこの5年くらいの間に使用していた(している)財布や名刺入れなどの革小物を使って質感や変化を紹介してみようと思います。
経年変化しているものは、未使用時の写真がないのでわからないかもしれませんがご勘弁ください。
まずはベーシックな牛革から。
植物タンニン鞣しの牛革
北米産の原皮を使用して、国内のタンナーで鞣されたものです。
昔ながらの製法を守り、約20の工程を踏まえて皮から革に変化していきます。
(鞣しの工程は以前に書いたことがあるので、そちらを参照していただくとわかりやすいと思います)
薬品類を使用しない、ミモザなどから抽出した樹液で鞣す植物タンニン鞣し。
薄いタンニン液から順に濃いタンニン液のピット槽に漬け込んでいくため、かなりの時間を要します。
100を超えるピット槽を備えており、それだけでも相当な設備が必要であることが想像できると思います。
加脂の工程で多めに油脂を加えているため、使い込むほどにかなりの艶が出ています。
(写真ではわかりにくいかもしれませんが)
1年弱使用したと記憶していますが、細かい擦り傷程度なら馴染んでしまうので表面は結構キレイです。
定期的に乾拭きをしていました。
手触りとしては、柔らかく弾力感があり滑らかな感触です。
指の腹を強めに押し付けると「キュッ」と鳴る質感、と言えば色々革に触れたことがある人なら感触が想像できると思います。
久しぶりに出してきて触れましたけど、良い革ですね。
バケッタ製法の牛革
こちらはイタリアのトスカーナ地方で代々受け継がれてきた鞣し方法で仕上げられた牛革です。
上記の植物タンニン鞣し同様、ミモザやチェストナットなどの樹液で鞣されており天然成分のみ使用しています。
掲載が逆の方が良かったかもしれませんが、製法としてはこちらの方が古くから行われているものです。
時間も手間もかかる職人の伝統製法というわけです。
こちらも油脂がたっぷり含まれているため、うっすら反射するくらいに艶が増しています。
(写真ではわかりにくいかもしれませんが)
同じく定期的に乾拭きしながら、1年くらい使用したと思います。
深く引っ掻いた部分は馴染み切らずに残っていますが、全体的にはかなり光沢感が出ています。
手触りとしては、やや張りがある感じで弾力感はあります。
ショルダーの質感と言えば、感触が想像していただけるでしょうか。
こちらもいい革ですね。
日本伝統の牛革、黒桟革
先月の記事でも少しだけ登場していますが、姫路の伝統皮革です。
「革の黒ダイヤ」と異名を持つほどの美しさが特徴で、革の鞣し技術と漆塗りの技術が融合した革です。
製品に使用している革は紫に染色されているので、黒の粒が点在しているように見えるかもしれませんが、漆の美しさは際立っています。
(やはり写真ではわかりにくいかもしれませんが)
日本エコレザー基準をクリアして認定されているはずなので、環境にも優しい革です。
漆塗りは一度ではないため、適した条件の元で塗っては乾かし複数回繰り返します。
そのためこちらもかなり時間と手間がかかっています。
美しい輝きだけでなく、摩擦に強いという特徴もあります。
手触りは漆で塗装されているだけにカリッとした感触。
半年から1年くらい使用していましたが、摩擦に強いこともあり表面はあまり変わっていません。
革自体は意外と柔らかさもあり、裏張りの革がない部分はソフトです。
黒桟革特有の表情はわかりにくいかもしれませんが、好みの色ということもあってとにかく美しいです。
こちらもやはりいい革ですね。
クロム鞣しの牛革
カーフの鞣しには定評のあるドイツの老舗タンナーのもので、高品質な仔牛革です。
クロム鞣しは革が硬くなりにくい鞣し方法なので、きめ細かく柔らかい仔牛革の風合いを活かした仕上がりになっています。
さらに収斂性の強い薬剤にしっかりと漬け込むことによってシボを加えています。
(そのため、これは写真でも凹凸がはっきりとわかりますね)
型押しとは違うので、一枚一枚または部位によっても個体差があります。
柔らかさを損ねない鞣し方法と、シボ加工が合わさることにより、弾力性と柔軟性が加わり曲げ伸ばしに強いことが特徴。
同時に、傷や汚れ、水にも強く上質なのに扱いやすくなっています。
これは、革全体をギュッと縮めることで密度が増すため。
水濡れも問題ないとは言いませんが、濡らした布をしっかり絞ってサッと水拭きするくらいは大丈夫です。
モチモチとした弾力感があってデリケートそうなのに、非常に丈夫になっています。
また発色の良さにも定評があります。
染色後に少しだけ顔料で色付けするため、革の風合いを損ねることなく均等で鮮やかな色が揃っています。
こちらは1年半ほど使用していますが、傷や色の変化などほとんどありません。
感触は非常に柔らかで弾力感があり、手馴染みはとても良いです。
実は以前にも同素材(パープル)の財布や小銭入れを1〜2年ほど使用していたことがあるので、個人的に結構長く使っている素材です。
風合いも感触も色味もとてもいい革ですね。
国内産のコードバン
鞣しから染色、仕上げまで同じ国内のタンナーで仕上げられたコードバンです。
安定した供給が難しく、削り出しやピット槽鞣し、グレージングなど仕上げるまで約10ヶ月を要すると言われています。
コードバンは以前にブログで取り上げたことがあるので、素材の特性はそちらを参照してください。
染料を用いて色付けされているため、よく見ていただくと素地がわかると思います。
使用による細かい擦り傷は入っていますが、線維層も牛革とは違うのが感じられます。
(漆やシボのものはそもそも比較しにくいですね、すいません)
特別な光沢感と透明感はコードバンならでは。
使用し続ける方が魅了される素材でしょう。
こちらは1年半ほど使用していたので、細かい擦り傷はあります。
時々コードバンクリームを薄く馴染ませながら、定期的に乾拭きをして使用していました。
淡く仕上がっている色合いを含め、とてもいい革ですね。
国内産の型押しコードバン
鞣しは上と同じタンナーのもので、染色や仕上げを別のフィニッシャー、そして型押し加工をまた別の型屋で仕上げたものです。
門外不出の染色技術は唯一無二のものであり、色の深みと透明感が共存しています。
色ははっきりとしていて濃いのに、こちらも素地がわかるくらいの透明感が特徴。
型押しを施すことで熱が加わっているため、ベーシックなものよりはさらに少し濃くなっていますがそれでもとても美しいです。
この型押しはコードバン特有の線維の起き上がりを抑え込んでいるため、擦り傷や水に対する耐性が備わります。
つまり、従来デリケートな表面の取り扱いに神経を使っていたことが解消されています。
爪で少しカリカリと引っ掻いてみたり、水を少しだけ垂らしてみましたがほとんど目立っていませんので扱いやすいです。
ちなみに素材は違いますが、型押しと比べると前出の仔牛革のシボの収縮はわかりやすいと思います。
こちらはまだ半年ほどの使用で、定期的に乾拭きのみ。
擦り傷などはほとんど感じられず、表面の変化は使用による艶が少し深まったくらいです。
特別な光沢に陰影が加わり、とてもいい革ですね。
さて、今回は革の種類は限定されますが実際に使っていた(使っている)革小物を接写して紹介してみました。
色々革製品を使用してきたり触れたことがある方は、写真を見て加工の仕上がりや感触も想像できると思います。
他にもスティングレイやクロコダイルも使用していたので用意したのですが、思いのほか結構な量になってしまったのでまた機会があれば掲載してみたいと思います。
それでは、また来月。