「この服、綿なのに家で洗えないのね?」
店頭で接客中、商品の洗濯表示を見たお客様からこのように言われたら、販売員のあなたはどう答えますか?
「お洗濯表示どおりのケアをお薦めします」
当たり前ですが、ベストな結論は、洗濯表示を守っていただくようお伝えすることです。
それによって、「それなら面倒だから買わない」と言われたら、それまでです。
最近、洗える思いますor洗えないの話になったとき、簡単に洗濯表示を軽んじた案内をする販売員さんが多くて、正直引いております。
「私は洗っちゃってます」
「綿だし、大丈夫そうですけどね」
「エマールとか使っていただければ」等々。
うーん…お金払うの、私(お客様)です。
洗ってダメだったら、どうしてくれるの?
今の一言、録音させていただいてよろしいですか…?
洗濯表示は、誰でもうまくいく方法
私自身の経験上、ドライマークでも一か八かで自宅で水洗いして大丈夫だった服もあります。
失敗しないように、縮ませないやり方を調べたり、使う洗剤の成分を考慮したりして、上手にできたこともあります。洗ったときにどう変化するかを想定したうえで、もうそれでもよいからと諦め半分で洗うこともあります。
でも、だからといって、お客様に洗濯表示どおりでなくても大丈夫だなんて、販売員の立場では軽はずみなことは言えません。
冒頭の「綿なのに洗えないのね?」というお客様の質問は、綿素材といえば洗えるものが多いので、よくお受けする内容です。
しかし、私たち販売員が扱うものは、生地やパーツを組み合わせてつくられた「製品」であって、素材そのものではありません。極論、洗ってしまえば洗えないものなんてないと思います。しかし、状態や質感の変化が起こってしまう可能性があるから、誰でも一番問題なくできるケア方法が洗濯表示として商品の一つ一つにつけられているのです。
家で洗えそうだけどNGになっているものを、洗ってしまったときに何が起こるのか
ドライクリーニング表示の服を水に浸けて洗ったとき、起こりうることは
- 表面の質感の変化(縮れ、毛羽立ち)
- 状態の変化(縮み、斜行)
- 本体の表地と裏地そして縫い糸の縮率の違いによるツレ、ねじれ
- 付属部分の生地の方向違いによる浮き、ねじれ
- 脱水時につくシワ(家庭用アイロンで伸ばしきれないものもある)
- 吸水の重みによる伸び、たるみ
このようなことが考えられます。また、地域によっては水道水に含まれる金属成分により微妙に色が変わるようなこともあります。
もちろん、見分けて工夫したり、慎重にやることで、先述のような事態を発生させずに洗濯できるのも一部事実です。しかし、洗濯の経験値の知れないお客様に対して、私なら洗ってしまうとか、エマールなら…とかは、無責任ではないでしょうか。
変化の程度や気にする点は人それぞれ。店頭に立っている販売員のみなさんなら、意外なことでクレームになるケースをよくご存知のはずです。
守備範囲の責任は果たし、やるべきことに集中しよう
お客様のいかなるご質問に対しても、真摯に対応するのは販売員としてあるべき姿です。
しかし、会社側が法律に基づき一点一点に付けている洗濯表示に対し、生産サイドほどその製品に対して情報も経験もないないお客様が、疑問を持つこと自体不毛という見方もできます。
重ねて、販売員はあくまで販売員であって、素材の知識はあれど生産管理の人間ではありません。例えば、同品番でも色が違うと工程が微妙に違う商品が存在していることなど、その場では知る由も無いのです。
そんな二者が、「こうすれば大丈夫かもしれない、どうだろう」という、どこまでも不確かな議論を真面目に展開することは、どう考えても無駄な時間です。
かといって、「すごく気に入ってるの。でもクリーニング店で失敗された経験があって、いまいち信用できない。お気に入りだからこそ、家で洗えたらいいのに」「近所には程度の良さそうなクリーニング屋さんが無い」というお客様に対し、「表示通りでお願いします」しか言えないのは、ひどく機械的ですよね。
では、どうすればよいでしょうか。
お客様は、どうして家で洗いたいのでしょう?
その商品を気に入ったから、いつもキレイに着たいのです。
でも、クリーニング店に持っていくのが手間、クリーニング代がかさむと思うと負担になるなどの理由が考えられます。
そこで、素肌に直に着ない、制汗するなど、汚れにくい着方のご提案をします。それから、お手入れに手のかかるほどのオシャレ着は、Tシャツのようにそんなに頻繁に着るものでもないことに気づいていただきます。
また、宅配サービスのあるクリーニング店の存在や、料金の目安をお知らせすることができます。
もし、それもめんどくさい、現実的でない、というのであれば、販売員の皆さんならどういうことかわかりますよね?実は言うほど気に入っていないから、商品の状態を保つためにそんなに頑張れないということです。